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2016-10-23 12:42

(連載2)日本がとるべきユネスコへの対応

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 もしこうした紛争や事件をユネスコ世界記憶遺産とするなら、相当なレベルでの公開性や中立性が求められる。関係者、関係国、複数の関係学会での一定の合意が必要になるだろう。ユネスコはどこへ進もうとしているのか、わかりにくい状況だ。ユネスコにおいては日本の関係は強かったが最近は、中国の関わりも強くなっている。日本の理系の研究者は相当に国際的な研究者のネットワークに入っている。しかし、日本の文系の研究者は極めて限られた人しか関わっていない。日本人のいない世界で、「常識」ができつつあるのだ。

 現在、ユネスコは大変な財政難に陥っている。2011年10月から、アメリカがパレスチナのユネスコ加盟により拠出金支払を停止したことが大きい。ユネスコは財政難から機能不全の直前にある。日本からの分担金が入らなければ、運営ができなくなる部署がでる。ここ数年ユネスコは部署の統合、職員のカット等を実施せざるを得ない状態に追い込まれた。部署によっては既にほとんど事業費がなくなっている。

 私は、パリのユネスコに事務所を持つ国際社会科学評議会の副会長や理事をしていた時には頻繁にユネスコを訪れていた。ユネスコの会議室で信じられないような停電や漏水も経験したし、スタッフの各部屋のブラインドが壊れかけていたのにも驚かされた。修理するお金がないのだ。予算のかなりは人件費に回り、事業費や修繕費などは後回しになる。さらに厳しくなっているのだ。昨年、ユネスコを訪れたとき、部署のスタッフの数が3~4年で半分になり、さらに少なくなりそうだとディレクターが嘆いていた。日本の分担金の留保は、相当な打撃だろう。

 ショック療法としてはいいが、基本的には解決の道を話すしかない。日本が払わなければ、中国がユネスコの最大の分担金国になる。ますます問題は深刻化する。ユネスコの年間予算は小さい。世界の教育、科学、文化の総本山の年間予算はわずかに3~400億円だ。ちなみに東京大学の年間予算は約2400億円である。ユネスコと一定の合意が得れたら、むしろ積極的にユネスコの再建に日本が寄与すべきだ。日本は教育、科学、文化での成長を目指す国だ。ユネスコとともに成長したいものだ。(おわり)
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