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2016-09-03 14:10

(連載2)台湾・蔡英文政権の展望

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 既に中国から台湾への観光客は激減している。これまで中国からの台湾旅行者数は急速に増えてきた。2008年から8年間続いた国民党政権は親中路線をとり、中台の人的交流は盛んになった。2015年には中国からの旅行者数は418万人となり、6年間で4.3倍に膨らんだ。2015年に日本への外国人旅行者数は2000万人弱を記録し、史上最高となった。その時の中国人旅行者数が499万人である。あまり日本と変わらない数の中国人が台湾を訪れていたのだ。

 日本と同じように、中国の旅行者は爆買いをして、台湾の観光業界は潤ってきた。日本よりも台湾が人口や経済規模が小さいのだから、中国人旅行者の影響力は非常に大きいものだ。2017年6月の中国人客数は約27万人と前年同月に比べ12%減り、単月ベースで2年5カ月ぶりの低水準となっている。さらに減りそうだ。ホテルや観光地などの観光関係の業種だけでなく、化粧品や医薬品、製造業にまで影響は及ぶ。中国からの旅行者の多くは中国の旅行代理店を使う。中国政府はこうした旅行代理店に台湾へのツアーを控えるように圧力をかけているといわれる。中国では人の移動は政府がかなりの程度コントロールできる。

 蔡英文・民進党政権に画期的な策があるわけではない。独立を宣言することはあまりにリスクが大きい。かといって、中国政府の主張を全面的に受け入れることもできない。ここは曖昧にしながら新たな展開を模索している。台湾は今、中国大陸依存からの脱却目指す「新南向政策」をとろうとしている。ASEANなどの東南アジアやインドなどの南アジアとの関係を強化しようというのだ。日本、アメリカとの関係を再強化するとともに東南アジア、南アジアとの新関係の構築で状況を打破する目論みだ。東南アジアや南アジアではすでに中国の影響力は強い。台湾は、中国の影響もあり、こうした国々と国交を持っていない。容易なことではないことは確かだ。しかし、今、中国と東南アジアや南アジアの主要な国とは関係が悪化しつつある。ベトナムやマレーシアなどが典型的だ。フィリピンも微妙な状況だ。

 台湾に展望がないわけではない。しかし、蔡総統が言うように「時間はかかる」のだ。中国からの圧力は、旅行者の削減だけでなく、貿易そのものにも及ぶかも知れない。展望はあるが、蔡台湾の行方は厳しい。アメリカと日本がどれだけ交流を深めるか、という点も重要なポイントになるだろう。中国にとっても、台湾は重要なパートナーとなっている。中国と台湾との関係が改善されることは重要なのだが、今のところその道筋は見えない。総統の一期目の任期は4年。この間に展望を作り、2期目で仕上げていく中期的戦略が必要だ。それまでに支持率が急落することがあれば、展開に支障は出る。国民もどこまで耐えることが出来るか。(おわり)
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