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2016-06-28 11:14

(連載1)「日本ブランド」に警笛!

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 1990年代から2010年くらいまでは、中国は未来の国だと皆が中国へと走った。そして最近になると、中国の危機が叫ばれ、一方的な悲観論が目に付く。あまりの変容ぶりだ。中国は5000年の歴史を持つ国であり、今なお13億人が暮らす世界最大の国である。時代によって当然、浮いたり沈んだりする。しかし中国は中国だ。一方的な悲観論も一方的な楽観論もあまり意味がない。短期的な視点に囚われるのでなく、中期的な視野を持ってバランスをとりながら付き合う姿勢が必要だ。

 日本も、1960年代から70年代にかけては波乱の展開であった。安保闘争や反ベトナム戦争の運動が活発化し、公害に国民は苦しんだ。誰もどうなるかわからない状態であった。1973年のオイルショックを契機に、日本は高度成長期から中度成長期に移った事は歴史の事実である。オイルショック後、政府は様々な政策を発動し、国家の成長率の低下を受け入れつつ安定した社会を作り出し、工業生産と環境保護を両立させて来た。急激な復興景気の副産物である公害問題もこの時期をピークに落ち着きを取り戻し始めた。

 現在中国経済の専門家達は、口を揃えて中国という大国の高成長時代は終焉し、日本のバブル崩壊のような危機が訪れると悲観論を展開しているが、日本でもオイルショック後からバブルの崩壊までは10年ほどの期間を要したわけであるから、中国が今すぐに崩壊するなどと危険性をことさらに煽るのはどうもしっくりこない。中国危機説はこれまでに何十回も唱えられてきたが、まだ中国に崩壊の危機はきていない。中国政府も様々な方策を講じている。確かに、中国の高成長期(いわゆる先富論を具現化するために13億皆が生産生産と邁進した時期)はもう終了したとみるべきであろうが、中国政府は今後その副産物(大気汚染、水質汚染、土壌汚染)を解決しながらソフトランディングしていく方向へ舵取りをするであろう事は明白である。よって、今すぐに崩壊という様な極端な考え方はあまりにも拙速と言わざるを得ない。中国の高度成長は終わったが、当分続くであろうゆっくりとした成長の時代がある。日本を大きく引き離して世界2位の経済大国になった中国はたとえ成長が止まっても、経済大国であり続けるのだ。

 詰まるところ、現在の中国という国家は時代の転換期にあって、それを政府が言うところの「新常態」状態であることをハッキリと認識した上での対応策が中国に関わる人や企業、そして国家には必要であると考えるべきだ。しかし、日本人は典型的な「石橋を叩いて渡る」式の発想になれてしまっており、誰もが中国の変化に気づきながらも手をこまねいてしまい、自ら事を起こすことを恐れてしまっているかのようだ。つまり、この「慎重すぎる対応」が結果として新しい波に乗りきれず置き去りにされてしまうと言うリスクを自ら選択してしまっている事に気づかない。(つづく)
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