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2016-04-06 14:27

中国の長すぎた一人っ子政策の代償

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 中国が一人っ子政策を行い始めたのは1979年。今、やっとこの政策が撤廃され、すべての夫婦に第2子の出産が認められるようになります。36年もの間一人っ子政策は続けられたわけで、弊害も生じています。まず基本的な問題として、少子高齢化が急速に進みます。一人っ子政策が徹底されるなら、出生率は当然1を下回ります。日本でも少子高齢化は大きな社会問題となっていますが、中国はこれからさらに厳しい少子高齢化の問題を抱えることになります。中国がこの20年間に凄まじいばかりの経済成長を成し遂げることができたのも、人口ボーナスがあったからです。

 しかしその人口ボーナスはすでに使い果たしました。日本においても、戦後のベビーブームの世代、つまり団塊の世代が労働力となった1960年代に経済は急速に伸びました。彼らが高給取りになった90年代、そして退職し始めた2000年代から経済は停滞します。その頃に日本は、人口ボーナスを使い果たしたのです。これから中国は厳しい逆ピラミッドの人口構成での社会運営を強いられることになります。次に、「闇っ子」とも「黒孩子(ヘイハイズ)」とも言われる無戸籍者の問題があります。その数は実に1300万にとも言われます。中国の人口からすれば1%ですが、絶対値としてすごい数です。

 ちなみにスウェーデンの人口は940万人。スウェーデンの総人口以上の無国籍者がいるのです。男児を好む中国の社会環境や堕胎をする費用がなく、2人目、3人目を出産せざるを得なかった状況などから、多くの無戸籍者が生じたのです。届け出ると巨額の罰金。結局、無届けのままになったのです。彼らはまともに教育をうけることができませんでした。病院にも行けませんでした。そうした彼らも、20代、30代になってきています。未だに解決できない状態です。まずは彼らの人権の問題。これだけ多くの無国籍者がいる国はありません。彼らには国が保証すべき権利が与えられていません。またこうした無国籍者は、国がコントロールできない存在になります。社会不安にもつながりうるものです。

 若年層の人口バランスの崩れも問題です。男児が生まれなかった場合、つまり女児が生まれた場合、「間引」や病気の時に看病しないなどによって女児は殺されていきました。農村部では特にこの状況は激しく、若い世代に男性が極端に多くなっています。7割、8割が男性という村もあると言われます。これは結婚できない男性が大量に出ることを意味します。さらに人口構成を崩しますし、大量の独身男性の存在は、社会秩序が崩れる可能性を高めることになります。中国は中央集権のもとに急速な経済発展を成し遂げました。しかし、一人っ子政策に見られるような強引な政策は歪もうみました。多くの人の人権問題にもなります。また、急速な少子高齢化、膨大な数の無国籍者、若年層における男女比率のアンバランスなどは社会不安をもたらします。一人っ子政策が長すぎた、と思います。未来へのつけとなりそうです。
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