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2015-12-05 16:40

大統領選挙とパリ同時多発テロ

川上 高司  拓殖大学教授
 フランスの首都パリでの同時多発テロを受けてフランスは「戦争状態にある」と怒りを露わにして空爆を強化している。さらにアメリカとロシアに一致団結してISISを叩くように要求する。一方でISISは「次はワシントンだ」「今後もテロは続ける」など挑発はエスカレートしており、世界には不穏な暗雲が垂れ込め始めている。それはまるで9.11テロを受けた直後のアメリカと世界を想い出させる。その後のアメリカのとった行動と世界を見れば、いまこそ冷静になることが重要だろう。パリの同時多発テロは世界中に衝撃と影響を与えているが、アメリカの大統領選挙にも大きく影響を与える。オバマ政権はテロの前に1万人のシリア難民を受け入れると表明した。だが、テロが起こると共和党が知事を務める19の州が受け入れに反対を表明するようになった。ニューハンプシャーは民主党の知事だが、難民の受け入れを断固拒否している。

 共和党はそもそも移民の受け入れには反対している。テキサス州知事は連邦政府の移民政策にはもともと反対しており、「移民も難民もお断りだ」と強硬な姿勢を崩さない。大統領選挙の共和党候補者たちもいち早く難民受け入れに反対を表明している。テッド・クルーズとジェブ・ブッシュは難民のうちキリスト教徒だけを受け入れるべきだと主張している。この表明に対してG20の会議に出席中のオバマ大統領はトルコで記者会見し、「宗教で選別することは恥ずべきこと」と強く反発した。

 マルコ・ルビオは、「シリア難民は中東の別の地域に移住すべき」とやはり難民を拒否する姿勢を示している。1万人の難民を受け入れて9999人は普通の人でも1人テロリストが紛れていればおしまいだ、というのが彼の意見である。最も過激なドナルド・トランプは難民は送り返せと威勢がいい。カールソンは、難民受け入れに必要な予算をカットすべきだと主張する。民主党の候補たちは、いずれも逆に難民受け入れに賛成でオバマ政権を擁護する。特にヒラリー・クリントンは6万5000人まで受け入れるべきだと主張し、リベラル・ホークの面目躍如である。

 だが、今後テロが頻発しアメリカ世論が難民排除の方向へ傾いていくと、クリントンは圧倒的に不利になり、共和党が優位に立つことになる。そのときクリントンは大統領選挙をあきらめてまでもリベラル・ホークを貫くのか、世論に迎合して大統領を目指すのか。厳しい選択がこの先待ち受けている。難民問題とテロ問題が起こって共和党が劣勢を挽回できる可能性が高まっている。大統領選挙は終わるまではわからなくなってきた。
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