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2014-08-19 14:33

ケリー長官の中東和平への願い

川上 高司  拓殖大学教授
 マレーシア民間機撃墜に、世界がロシアへの批判をヒートアップさせているが、アメリカ政府は親ロシア派によるものだという可能性を示唆しつつも確実な証拠がないことを強調するようになった。結局だれがなんのために撃墜したのかは不明としつつ、ロシアの直接的な関与は否定しあくまで親ロシア派を支援したことの責任を負うべきだと、非難をトーンダウンした。ヨーロッパもプーチン大統領の側近への経済制裁では一致したものの、実際の実施については意見がまとまらず実現の見通しは暗い。

 一方イスラエルの地上、空、海からの猛攻撃にさらされ500名以上の犠牲者を出しているガザ地区での停戦交渉にケリー長官は中東に飛んだ。国務長官就任以来イスラエルとパレスチナ和平にとりわけ力を注いできたケリー長官は、停戦を実現できるか正念場を迎えている。ケリー長官とネタニヤフ首相の出会いは、1970年代のボストンに遡る。上院議員として頻繁にイスラエルを訪れるケリー氏を、ネタニヤフはイスラエルのよき理解者と好感を持って接するようになったという。そのケリー氏が国務長官に就任してネタニヤフ首相はおおいに期待したに違いない。

 だがケリー長官の要求は厳しかった。入植に強く反対しパレスチナを国家として認めること、収監者の開放などネタニヤフ首相にはとうてい受け入れられないことばかりだった。何よりもネタニヤフ首相を怒らせたのはケリー長官がパレスチナ人の感情に理解を示したことだった。ケリー長官はかつてベトナム戦争に従軍した。ベトナムでは現地の人々の怒り、憎しみ、徹底的に闘うという決意のにじみ出た表情に面食らったという。彼らがアメリカを、自分をどう見ているのか、その表情から悟ったというケリー氏は、ベトナム戦争は間違っていると感じた。

 その時のベトナム人の表情が、今のパレスチナの人々と重なるとケリー氏はネタニヤフ首相に語った。パレスチナ人がイスラエルをどう見ているのか、そしてイスラエルに対して自爆テロも辞さないという決意が理解できるというのだ。だからこそ、紛争を終わらせなければならないとケリー長官は平和に向けて心血を注ぐ。「あのベトナム人の顔は生涯忘れることはできない」、そう語るケリー長官に残された時間は少ない。
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