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2014-05-12 15:27

中国の反日ナショナリズムの背景には事実上のゼロ成長

田村 秀男  ジャーナリスト
 1972年の日中国交正常化をうたった日中共同声明で「対日戦争賠償の放棄」を明言した中国が、戦時中の問題を根拠に商船三井の船を差し押さえた(のちに解除)。北京当局はしかも、第2次大戦中に強制連行されたという元労働者らが日本企業に損害賠償を求めるのを支援している。共産党指導部の反日路線極まれりだが、その背景には中国経済成長の行き詰まりがある。日本企業による対中投資が激減する恐れよりも、国内経済停滞に伴い高まる共産党体制への国民の不満を日本にそらすしかなくなっている。

 「えっ、中国はこの第1四半期でも実質7・4%の経済成長を遂げているじゃないの」と疑問を抱く方もおられるだろう。だが、中国で言う7%台の成長は事実上はゼロ成長以下に相当するとみたほうが正確だ。実質国内総生産(GDP)と鉄道貨物輸送量の前年比増減率の推移をみると、ほかならぬ李克強首相が2007年3月、遼寧省党書記時代、訪ねてきた米国の駐中国大使に向かって、当国のGDP統計は作為的で信頼できないとし、「重量をもとに運賃を計算する鉄道貨物量はかなり正確にGDPと連動する」と述べた。なるほど、08年9月の「リーマン・ショック」後、鉄道貨物輸送量はマイナス6%だったのに、GDPデータは6・6%のプラス成長になっている。当時の中国経済を引っ張ってきた輸出が激減したのだから、どちらのデータが本物のGDPを反映するのか、答えは歴然としている。

 12年以降、GDP公式統計でみる実質成長率は現在まで7%台を保っているが、鉄道貨物データのほうは12年9月から13年6月にかけてマイナスまたはゼロ%の成長を示したあと、13年後半に回復したのはつかの間、ことし3月にはマイナス3・5%に落ち込んだ。中国の経済不振は今や、リーマン・ショック当時よりもはるかに長く続く気配だ。輸出は依然として低迷しているし、国内は不動産相場の下落が全国に広がり、高利回りの理財商品の焦げ付きによる信用不安の爆発懸念が起きている。この停滞は中国特有の経済成長モデルの破綻からきており、一時的にとどまるはずはない。中国モデルとは農民出稼ぎの低賃金、外資導入、輸出、固定資産投資による高度成長達成だが、賃金は上昇し、他の成長要因のいずれも勢いを失っている。しかも、乱開発は慢性的な過剰生産と環境破壊と同時に、不動産バブル崩壊不安を呼び込んでいる。

 この行き詰まりを知っている実務派の李首相は「構造改革」を唱えているが、実行力が弱い。上海金融市場の自由化も、どこまで成長に結びつくのか不明だ。習近平国家主席は「反日ナショナリズム」をあおり、大衆にアピールしやすい日本企業のモノやカネの奪取に焦点を合わせている。対中投資をさらに増やそうとする自動車大手など日本企業は「飛んで火にいる夏の虫」同然なのか。
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