国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-03-31 19:55

クリミア半島情勢に内向きなアメリカ国民

川上 高司  拓殖大学教授
 クリミア半島のクリミア自治共和国では、16日に住民投票が行われた。クリミアはウクライナに留まるのか、ロシアへ編入するのか、独立するのかを巡っての投票である。投票結果は95.5%という高い支持を得たのがロシアへの編入であった。ロシア系住民が6割を占めるクリミアでは、投票前から予測された結果ではあった。この住民投票の結果についてオバマ大統領は16日、プーチン大統領と電話会談し「合衆国をはじめ国際社会は認めない」と強硬な姿勢を伝えた。一方のプーチン大統領は、今回の住民投票は「合法的なものである」とこちらも強硬な姿勢を崩さない。

 ウクライナを巡って米露の対立が先鋭化する中新たな冷戦の始まりと危惧する声もあるが、プーチン大統領は「ウクライナが原因で冷戦になることはあり得ない」と一蹴した。それを裏付けるかのように16日の電話会談では、問題はウクライナの安定であり安定のために米露で協力していくことが二人の大統領によって確認された。ウクライナは、アメリカにとっては遠い国である。ピュー・リサーチ・センターの3月11日の世論調査によれば、ウクライナ問題に関与すべきと考えているのは30%、関与すべきでないと考えているのは44%である。また、アメリカが取るべき態度としては、ロシアに対して強硬姿勢をとると答えたのは29%だが、関わらないようにすべきと答えたのは56%だった。

 さらに、ウクライナ問題でアメリカが消極的な姿勢をとってもそれはオバマ大統領の弱さの表れと考えているのは20%にすぎない。アメリカ国民は、ウクライナ問題ではアメリカは傍観者でいいと考えているのである。フランスのフィガロ紙の世論調査でもウクライナへの経済支援に反対するフランス国民は64%、ドイツ国民は57%だった。さらにウクライナのEU加盟には、フランスでは反対が71%、ドイツが62%と高い。つまりフランスもドイツもウクライナに関わらないでいるべきというのが市民の感情のようである。ドイツやフランスにしてみれば、破綻国家はギリシャで十分というわけである。

 アメリカにとってロシアは重要なパートナーである。イラン、シリア問題はロシアを抜きには解決しない。さらになによりもアフガニスタンからの撤退にはロシアの協力が不可欠である。対立を引き起こしてもアメリカのプラスはならない。先の電話会談では、オバマ大統領は今の米露の対立に対して外交努力による解決の可能性に言及したという。まさに外交手腕を大いに発揮してもらいたい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会