国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-02-06 17:00

解決しないNSA問題で不信感が募るメルケル首相

川上 高司  拓殖大学教授
 1月31日、ケリー長官はドイツを訪れた。ミュンヘンで開かれた安全保障会議に出席するためである。ケリー長官は盗聴問題は終わったかのように振る舞ったであろうが、メルケル首相は実はまだ怒っている。ドイツにとっては盗聴問題はまだ渦中のテーマなのである。しかしドイツ側は謝罪の言葉をケリーにはまったく期待していないという。公式な謝罪のないことがさらにメルケル首相を苛立たせている。

 NSAによるドイツでの盗聴が暴露されてからケリーはアメリカとヨーロッパの「絆」を強調するようになった。ケリーは子ども時代をベルリンで過ごしており、ドイツは身近な国である。両国の関係が良好な方がいいに違いない。だが本人が考えているほどには歓迎されていないようである。メルケル首相は「盗聴問題に関してはアメリカとドイツでは天と地ほど認識に違いがある」といまだに憤懣やるかたないのである。昨年にはドイツ議会は盗聴問題の証人としてロシアに亡命中のスノーデンを召喚しようとしてアメリカの不評を買った。召喚は実現しなかったが、議会では今度は検証するための特別委員会を設置する請願が提出されたという。ドイツはどこまでも徹底的に追及するつもりなのである。

 ドイツでは新しくステインメイヤー外務大臣が就任し、ドイツの国際社会での役割を拡大したいと考えている。特にドイツ軍の任務を拡大し、国際社会に関与したいと考えている。メルケル首相や前任の外務大臣はドイツ軍の役割を最小限に抑える方針だったが、後任者は「日々発生する残虐な行為を見逃していいのか?」とより積極的である。フランスはアフリカのマリで展開している軍事行動の支援を求めているが、「フランスだけに軍事行動の重責を負わせたくない」とさっそく支援に前向きである。

 もしドイツが本気で転換するならばそれはアメリカにとっては歓迎すべきことに違いない。オバマ政権はヨーロッパを牽引する役割をドイツに求めており、特に積極的に軍事的な役割を果たして欲しいと期待してきた。ドイツが役割を拡大すれば、アメリカはますます役割を縮小していくことができる。ますます内向きになることができるのである。メルケル首相の不信感を払拭しドイツとの関係を良好にしておくことがアメリカの国益にかなうならばその努力をすべきだろう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会