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2014-01-30 15:15

テロ対策の転換点となるかもしれないソチオリンピック

川上 高司  拓殖大学教授
 いよいよソチオリンピックが迫ってきた。プーチン大統領はロシアの威信を賭けて成功に導くに違いない。2013年は「プーチンの年」と言われるほど外交で活躍したが、ソチオリンピックを成功させてさらに得点を稼ぎたいところだ。だが、そのプーチン大統領の頭を悩ますのは国内問題だ。昨年12月末にはロシアでは2つのテロが起こった。テロの起こったロシア南部のボルゴグラード(かつてはスターリングラードと呼ばれた)はチェチェン共和国などがある北コーカサス地方に近い。

 イスラム国家のチェチェン共和国は独立を求めてロシアと戦闘を繰り返してきた。そのためソチオリンピックが近づくにつれてプーチン大統領は気が気でないだろう。なにしろチェチェンの武装グループは「ソチオリンピック妨害」を公言してプーチン大統領に喧嘩を売ったのである。プーチン大統領は特殊任務部隊「スペッツナツ」をソチに投入してテロの制圧を図ろうとしている。その本気度は、プーチン大統領には24時間、ロシア一屈強な護衛が張り付いていることから伺える。

 このロシアの「スペッツナツ」は、かつてチェチェン武装グループを標的として結成されたエリート部隊である。アメリカ海軍の特殊部隊「シールズ」のロシア版ともいえ、イスラムテロに特化された高いスキルと忠誠心を持つ。彼らはかつてのチェチェン紛争で暗躍した凄腕で経験も豊富でテロに対しては厳しい。だから彼らはプーチン大統領に反感を持っている。なぜならば大統領がテロリストに対して「生ぬるい」からだという。彼らはテロリストに人権は認めない、徹底して制圧するのみ、というのが持論だ。ソチの対テロ対策の切り札とプーチン大統領が信頼するゆえんである。

 ロシア政府は相当数の警官や軍を投入してソチの安全確保に努めるが、それでもテロリストを見つけるのは難しい。彼らは市民に混ざっており見分けることができないからだ。国防総省はロシアに対して対テロ対策で協力を申し出ている。もしロシアがアメリカの申し出を受けるとすれば、国際社会という点からも対テロ対策という観点からも転換点となるかもしれない。単独でテロとの闘いを進めるオバマ政権にとって、イスラムテロと長年格闘してきたロシアの経験は貴重に違いない。そして米露がテロリズムを追放するために利害を超えて協力するならば、まさにオリンピックは「平和の祭典」名利に尽きるだろう。ソチオリンピックはそんな視点からみてもおもしろい。
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