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2014-01-15 20:47

(連載1)進んでいる中国共産党の宣伝戦略

鈴木 馨祐  衆議院議員
 1月6日のフィナンシャルタイムズの論説に、「今の国際情勢で思い起こすべきはミュンヘンの失敗ではなくサラエボの失敗」という趣旨のコラムがありました。簡単に言えば、ナチスドイツが軍事的野心を抱きながら台頭しているにもかかわらず、その脅威を適正に評価せずに棚上げし毅然とした対応を初期段階で怠った結果、第二次世界大戦を引き起こすことになったという「ミュンヘンの教訓」ではなく、サラエボ事件の後、各国がナショナリズムや国際的な謀略戦の中で真剣に平和への努力をすることなく戦争に向けて進んでしまった結果、第一次世界大戦が生じてしまったという「サラエボの教訓」の方が、今の国際情勢に近い、という議論です。

 シリア情勢などについての記述もありますが、ここでの議論は主に東アジアの状況についてでした。一つの新聞の論説に一々目くじらを立てる必要もありませんが、影響力がそれなりにある新聞だということと、情勢認識の誤りが明確であること、更にはフィナンシャルタイムズの外交問題担当のコラムニストであるGideon Rachman氏のこれまでの論説がかなり中国共産党の主張に沿ったものとなっていること、等から判断して、ここにその違和感を書かせていただく次第です。一言で言えば、この認識、今の東アジア情勢で想起すべきは「ミュンヘン」でなく「サラエボ」という論旨こそ、かつてのナチスドイツ、現代の中国共産党、北朝鮮労働党の思う壺であり、結果的にこの地域を戦争に巻き込みかねないものといわざるを得ません。

 「ミュンヘン」の状況は、ナチスドイツの軍備的な急な増強が明白であり、かつ欧州における覇権を戦争をしてでも奪おうという政治的意図が相当程度明白であったにもかかわらず、ナチスドイツ性善説、情勢分析における根拠なき楽観視、そしてなによりもナチスドイツの暴走を止めるという強い政治的意思の欠如により、それに対応する時機を逸してしまったというものです。一方の「サラエボ」においては、それぞれのプレーヤーがナショナリズムを背景に軍事力増強に走り、何となくズルズルと戦争への意思もないまま、平和を希求する意思もなくそれぞれの事情でエスカレートしていってしまったというのがその実態に近いと思われます。

 今の東アジア情勢。特に今の中国共産党の動きとそれに対する日米や台湾、ベトナムやフィリピン、オーストラリアの動き、これをどちらの状況に近いと見るか、これはかなり明らかではないかと思われます。中国が主張するように、日本の様々な行動が地域の不安定化を引き起こしているという「中国の戦略的ロジック」を鵜呑みにでもしない限り、サラエボ後に状況が似ているとは到底考えられないのではないでしょうか。(つづく)
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