国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-11-27 17:56

不正蓄財と資本逃避で中国成長モデルは破綻する

田村 秀男  ジャーナリスト
 北京の天安門前に4輪駆動車が突入した10月28日には、もう1つ重要な出来事があった。習近平党総書記・国家主席ら党最高幹部の資産公開を求めたために、当局に逮捕されていた市民が裁判にかけられたのだ。習氏は先に、薄煕来元重慶市書記を無期懲役に処し、「大物」でも汚職腐敗に厳罰で臨むと誇示したわけだが、多くの市民が「なら、自身がどのくらい蓄財しているか、明らかにしなさいよ」と言い出したのだ。習氏は要求を無視するばかりか逆ギレし、弾圧する始末だ。

 党幹部の不正蓄財の横行は中国の政治、社会問題にとどまらない。中国の経済を、航空機でいえば、ダッチロール状態にしている。不正蓄財される資金は香港経由などで海外に一旦移された後、中国本土に還流して不動産などに投資され、その売買益は再び海外に流された後、またもや還流するという循環プロセスの中で増殖を続ける。昨年10月に、ニューヨーク・タイムズ紙は内部文書をもとに温家宝前首相の一族が27億ドルも蓄財していると報じた。

 上記の薄氏も妻が首謀して温氏一族以上の規模で不正蓄財し、海外に隠しているといわれる。党幹部に蔓延している不正資金を合計すれば、中国経済を揺さぶるに十分な規模に膨れあがるだろう。とはいえ、不正総額を中国の統計から正確に算出することは不可能だが、およその検討は付けられる。厳しい外国為替管理体制を敷く中国で、海外との間で合法的に出入りできる資金は、(1)貿易収支の黒字または赤字分(2)中国からの対外投資に伴う利子・配当収入から外国企業の対中投資の利子・配当収入を差し引いた所得収支(3)対内、対外直接投資の差額である。これら合法資金の増加額合計から外貨準備増加額を差し引いた額を資本収支としてみなすと、資本収支の中には、当局が例外的に認める投資行為もあるだろうが、大半は投機目的の資金(ホットマネー、中国語で「熱銭」)の流出入差額とみてよい。

 一目瞭然、熱銭を中心とする資本は2008年9月のリーマン・ショック直後に年間二千数百億ドル規模で逃避したが、北京当局による融資増で値上がりし始めた不動産に熱銭が入り、不動産や金融のバブルを引き起こした。バブル崩壊不安が生じた11年後半から熱銭は引き上げ始め、12年前半からは逆に年間2000億ドル以上もの資本逃避が起きた。熱銭を国内につなぎ止めるために、当局は金利を高めに据え置き、人民元の値打ちを上げる、つまり元高政策をとっている。元高は輸出産業に打撃を与え、鉄道貨物輸送量でみる中国の実体経済は昨年末からゼロ%以下の成長を続けている。農村からの出稼ぎ労働者を中心に不満が高まり、暴動が頻発する。がん細胞のごとく増殖する党幹部不正蓄財機構が支配する経済が行き詰まらないはずがない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会