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2013-11-13 06:51

奇人小泉が「即時ゼロ」の奇論

杉浦 正章  政治評論家
 鳩山由紀夫、菅直人に小泉純一郎が加われば、まさに“日本3大馬脚”の出現だ。いったん首相官邸という組織を離れると、政治家というのはかくも愚かな政治判断しかできなくなって、馬脚を現すのであろうか。小泉は12日の記者会見で、原発の「即時ゼロ」という奇論をまくしたてたが、全くの「根拠レス」であった。その様子をつぶさに観察すれば、婆さん芸者が若い芸妓の踊りを見て、血が騒いで踊り出すという醜態でしかない。そういった指摘をされるのをを知っているから、普通の政治家は首相を辞めた後は言動を慎むのだが、この3人は恥も外聞もなく、あられもない姿を露呈している。ところが「原発ゼロなら何でも大歓迎」の朝日新聞の論悦委員・惠村純一郎は報道ステーションで、今や朝日のお家芸となった“風評”をまたまたまき散らして、小泉発言を翼賛した。何とポスト安倍を意図したものだというのだ。惠村は「小泉さんは安倍さんに対して君が決断しないと誰かをポスト安倍に担いでもいいですよという感じだ。ポスト安倍を占うキーワードに原発が浮上してくる」と述べたのだ。仮にも政治記者を経験したであろう大新聞の論説が、首相をやめて8年もたち、しかもノーバッジのおっさんにそんな力があると思っているとしたら、朝日の政治記者の力量は推して知るべしであろう。朝日は小泉発言をトップで扱うなど、相変わらず恣意的な紙面を作っており、「世論の支持が広がれば無視できなくなる」と褒めたたえているが、この判断も“虚偽表示”の類いだ。

 小泉の発言は、理路整然と間違う傾向のある自民党幹事長・石破茂の判断力欠如も如実に露呈させた。「小泉発言を詳細に分析する」と述べていた石破は、その結果について「ゼロを目指すと言っているわけで、今すぐゼロにせよと言っているわけではない」と弁護した。ところが記者会見で小泉は「即ゼロがいい。その方が企業も国民も様々な専門家も準備が出来る」と石破の判断と真逆の発言をしたのだ。幹事長たるもの、これほどの大問題なら、本人に確かめて発言するのが常識だが、小泉が怖いのか会わないまま“分析”するから、みっともない結果を招く。小泉はゼロへの道筋について「政治で一番大切なことは、まず方針を示すことだ。原発ゼロという方針を政治が示せば、必ず知恵のある人がいい案を作ってくれる」と発言、得意の首相先導型政治論を展開した。しかし「知恵のある人」は世界中探してもいない。いないからこそ世界のエネルギー事情の潮流は大小の事故を経た上での「入原発」であり、紛れもなく「脱原発」にはない。だから首相・安倍晋三の原発売り込みが成功しているのだ。郵政民営化のまぐれ当たりの政治手法が、原発に通用すると思っているから、婆さん芸者だというのだ。国家の存立にかかわるエネルギー問題で、床屋談義に毛の生えたような大言壮語を展開しても駄目だ。しかし側近を失った今、床屋談義のレベルを出られないのが、小泉発言の本質なのだ。

 そもそも小泉発言は、一連の発言の発火点となったフィンランドの原発最終処分場オンカロ視察をねじ曲げることから発想している。オンカロは、フィンランドがさらに原発2基を新設するために先手を打って作ったのであって、原発破棄が目的ではない。小泉の秘書であった飯島勲が「ドイツやスペインは太陽光発電の負担を(電気料金に)上乗せして困っている。日本がそのような状態に陥ることが国民にとって幸せか」と真っ向から小泉発言を批判しているが、その通りだ。ドイツもスペインも太陽光発電の買い入れで大失敗をしている。ドイツの原発ゼロは破たん寸前だ。再生可能エネルギーの技術の壁とコスト高に直面している。加えて送電網の整備にかかるコストに悲鳴を上げている。2000年に始まった固定価格買い取り制度によって太陽光発電が急速に普及したが、買い取りで財政が成り立たなくなったのだ。スペインの場合は「太陽光バブル」が弾けて、同発電は壊滅状態だ。リーマンショックで補助金が出せなくなった結果だ。

 こうした実情も無視してか、小泉は自民党の現状についても「賛否は半々だ」と述べたが、これも見当違いだ。総選挙は原発ゼロ新党が出来るなど原発の存否をめぐる戦いであったのであり、参院選も公約に再稼働を掲げての選挙戦であった。それをかいくぐってきた議員らはほとんどが原発推進論であり、ゼロを唱えるのは隅に追いやられて膝小僧を抱えている河野太郎と何も知らない若手の一年生議員くらいのものだ。政府・自民党は石破のように小泉発言や亡国の朝日の論調などに臆してはならない。また依然1.6%そこそこの再生可能エネルギーなどに幻想を抱いてはならない。先人が成し遂げたエネルギー革命の中核である原発を予定通り再稼働させ、世界でもっとも安全な原発を海外に普及させるべきである。現在規制委員会で7原発14基の安全審査が進んでおり、結論が出次第躊躇せず早期に再稼働に踏み切るべきである。そして舞い上がった反原発のホコリがおさまったころ、世界最強の原発の新設に踏み切り、国のエネルギー政策の根幹を揺るぎないものにしなければならない。一方で小泉が怠慢にもその政権時代に手をつけなかった、廃棄物処分場の候補地の決定を急ぎ、同時に核燃料サイクルとその定着に全力を傾注すべきだ。幹事長代行・細田博之が「石炭や火力に依存すると、人類に遙かに大きな負担をもたらす。発言は結論としては正しくない」と小泉に反論しているが、まさにこれが正しい。
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