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2013-08-27 10:54

(連載)消費増税は破産した官僚主導政策の象徴(2)

田村 秀男  ジャーナリスト
 唯一の救いは、国家指導者である安倍晋三首相が筆者のような増税反対論に耳を傾け、圧倒的な増税派の数の大合唱にもかかわらず、「消費増税を決め打ちせず、今秋、経済情勢をしっかり見極めながら判断する」と明言していることだ。他の政治家なら、これほどの多勢に包囲されるまでもなく、「3党合意があるから」という大義名分を使って、増税実施を指示し、プロセスは財務官僚に丸投げしたことであろう。およそ、財務官僚の意に従わないような指導者が登場したこと自体、今の日本では奇跡に近い。

 ただ、現下の政治情勢として、安倍首相が増税凍結や大幅延期の決断を下せる環境ではない。首相周辺筋からよくそう聞かされる。安倍首相は増税慎重派を含め、消費増税がアベノミクスのめざす脱デフレへのマイナスの影響や、税収増あるいは財政再建につながるかどうかなど、多くの識者から見解を聞くよう、甘利明経済再生・経済財政担当相らに有識者会議の設置を指示したのだが、財務官僚ら翼賛会にとってみれば、「ガス抜き」作業としか考えていないだろう。だが、筆者の欲目かもしれないが、ひょっとして、安倍首相は日本の戦後レジームにどっぷり漬かった他の政治家と違って、それこそ異次元の決断に踏み切るかもしれない、とひそかに期待している。

 消費増税こそは、安倍氏が第一次安倍内閣時代から脱却を訴えてきた「戦後レジーム」そのものの代表的産物だからである。「脱却」とは一義的には、憲法改正や集団的自衛権など政治・安全保障の懸案の実現を指すのだろうが、憲法改正にいたっては、「盟友」のはずの麻生太郎副総理・財務相から意味不明のナチス発言が飛び出すほど、自民党内の足並みはばらばらだ。

 実は経済の戦後レジームからの決別こそは最優先すべき課題である。考えてもみよ。官僚主導の政策の誤りの産物である「15年デフレ」が国民と国家の運命を狂わせ、中国や韓国の対日軽視、増長を許してきた。それは明らかに日本の安全保障を足下から崩している。安倍首相が財務官僚のシナリオを拒絶するのは、時代の要請なのであり、アベノミクスの核心になるべきなのだ。(おわり)
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