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2013-08-23 11:11

(連載)新聞のブログ化について思う(1)

加藤 朗  桜美林大学教授
 ワシントンに来てから朝日新聞と産経新聞をiPADで読むのを楽しみにしている。日本の朝6時、ワシントン時間前日午後4時には朝刊が読める。昔には考えられなかったことだ。一年近く両紙を読み比べて、気が付いたことがある。それは、両紙ともブログ化していることだ。両紙とも、個人が書くブログのように主張が主観的で、客観報道の建前はとっくにかなぐり捨てている。

 iPADで記事ごとに拡大して新聞を読んでいるせいか、まるでメルマガやブログの記事を読んでいるような思いにとらわれる。メルマガやブログは個人の主張を明確に打ち出しているので、賛成であれ反対であれ、それなりに読んでいて興味をひかれる。産経も朝日も、メルマガやブログのように記者の主観を全面に出して読者の関心を引き、読者離れを食い止めようとしているのだろうか。

 特に安倍政権誕生以降の両紙の安倍首相個人のみならず政策についての報道姿勢は全く対照的だ。産経はひいきの引き倒し、褒め殺しにでもしたいのかと思うほど安倍首相を褒めちぎり、彼の政策を支持している。他方朝日は安倍首相に私怨でもあるのか、とにかく彼のやることなすこと、どんな小さなアラでも見つけ出し安倍首相個人や政策をこき下ろしている。たとえば円安になれば産経はアベノミクスを讃え、朝日はインフレを懸念する。円高になれば産経はアベノミクスの徹底を訴え、朝日は「だから言わんこっちゃない」とばかりにアベノミクスを批判する。また参議院選挙の時には、日本はいつからアメリカのように新聞社が支持政党を明確にするようになったのかと思うほど、産経は安倍、自民党支持、朝日は反安倍、反自民の姿勢が明白だった。

 気になるのは、どちらか一紙しか読んでいない人は、それぞれの新聞からしか世界が見えず、世論が二分化していくのではないか、ということだ。産経が大きく取り上げる記事は朝日では小さい記事か、無視されることが多い。逆もまた然りである。もっとも産経の発行部数は2011年で160万部、対する朝日が771万部で四分の一以下だ。世論が二分されるなど杞憂に過ぎないかもしれない。部数から見る限り、民意は朝日にあるのだろう。(つづく)
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