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2013-06-12 06:59

安倍の「原発推進政権」こそ早期復興への近道だ

杉浦 正章  政治評論家
 「これは原発推進政権だ」と朝日新聞が6月8日の社説で激怒している。首相・安倍晋三の原発推進路線とセールスマンぶりが佳境に入っているからだ。安倍は中東、インドへの売り込みに続いて、東欧市場に着目、16日にはポーランドでチェコなど東欧諸国首脳と個別に会談、売り込みを展開する。野党、マスコミなど原発反対派は、参院選の焦点に再浮上させようとしているが、既に総選挙で「脱原発派」は完敗しており、無駄な戦いはやめたほうがいい。誰も気付いていないが、原発停止で海外へ流失する国富は年間5、6兆円に達し、大震災の復興費となる国民の血税を完全に吹き飛ばしてしまっている。反対派は、現実を直視するときだ。安倍は大胆にも参院選を前にして原発推進の動きを鮮明にし始めた。「原子力規制委員会が再稼働を判断した原発は、再稼働をできるだけ速く実現する」と国会で答弁したのを皮切りに、トルコ、アラブ首長国連邦、インドなどと原子力協定を軸に原発セールスに成功しつつある。フランス大統領のオランドとも7日、原発での協力を強化することで一致。日本原燃社長の川井吉彦と仏原子力大手アレバ社の最高経営責任者・リュック・ウルセルが協力強化の覚書に署名するに至った。安倍によるトルコへの売り込み成功も日仏協力の結果であり、今後も三菱重工業とアレバの合弁会社が造る新型炉「アトメア1」などを「世界最高水準の安全性を持つ原発」として、売り込んで行く構えだ。安倍は「日仏は世界最高のパートナーだ」と胸を張る。

 先に指摘したように、安倍は池田勇人以来のトップセールスを展開しているのだ。ドゴールから「トランジスタのセールスマン」と言われたように、池田の商品は極小のトランジスタであったが、時代の変遷で安倍は原発という超大型商品の売り込みである。その動きは止まらない。今度は東欧諸国の市場に着目している。安倍は17日からのサミットに先立って、ポーランドで東欧諸国首脳会議に出席するとともに、チェコ、ハンガリー、ポーランド首脳らと個別に会談する。既にチェコとはロシアとの激しい受注競争に勝って、東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)が受注する可能性が高まっている。安倍はチェコ大統領・ゼマンとの首脳会談で、原子力技術の相互協力を柱とする覚書(MOU)を交わす予定だ。東欧諸国への売り込みはロシアや韓国などとの競走が激しいが、同諸国はチェルノブイリ事故で安全性への関心が高まっており、高性能な日本の技術への期待感が強い。日本メーカーは電源を失っても原子炉を長時間冷やす能力、耐久性に優れた圧力容器など、海外メーカーにはない最新技術を持つ。ロシアや韓国などの怪しげな原発とは安全性において比較にならない。ハンガリー、ポーランドなどへの“拡販”も展開する。

 こうした動きについて、マスコミの動向は歓迎と反対に真っ二つに割れている。社説等でも、読売、日経、産経が輸出賛成で、原発早期再稼働論だ。朝日、東京が絶対反対。毎日が慎重論だ。これは日仏原発連携をめぐってもピタリと割れた。まず賛成派は、読売が8日の社説で「日仏が技術や経験の蓄積を生かして協力する意義は大きい」と絶賛。産経も「政府間連携として評価したい」と強調している。一方で反対派の社説は、安倍政権の推進策に焦燥感をあらわにして、感情的なものが多い。東京の社説を例に挙げれば、日仏首脳会談を「進むべき方向が違うのではないか」と指摘した上で「凄惨(せいさん)な事故も忘れたかのように原発再稼働を急ぐ安倍政権の姿勢は、明らかに異様だ。避難や仮設住宅住まいがなお続く被災者に思いをはせれば、何よりもフクシマの収束を優先させ、それ以前の再稼働や原発輸出などあまりに無神経すぎる」と断じている。国の存亡の根幹であるエネルギー政策を1200年に一度の事故と“抱き合い心中”させたいような書きぶりだ。東京の社説の方が異様さにおいて格段と上回る。

 一方で朝日の8日の社説は怒りの余りか、冒頭から間違っている。「安倍政権は、総選挙で公約した原発依存を減らす方向とは逆向きに突っ走る」と指摘しているが、総選挙が「脱原発」のポピュリズムと「原発再稼働を言わないままの選挙は国民を欺く」(石破幹事長)と再稼働を主張する自民党との戦いであり、紛れもなく脱原発派が大惨敗した選挙であったことを故意に曲解するものだ。両紙とも、核燃料サイクル事業の行き詰まり打開で日仏が協力することに反対しているが、「もんじゅ」にせよ、六ケ所村の再処理工場にせよ、本格的に核燃料サイクルに取り組んでいるのは、日本だけであり、ある意味で人類の希望が託されていることに考えが及ばない。科学技術の発展は試行錯誤の連続であり、高い理想を設定してこそ進歩するというイロハを学習し直した方がいい。両紙の論調で一番欠けているのが、エネルギー安保の視点だ。世界が原発推進へと動く中で、日本だけが、原水爆禁止運動によって培われたイデオロギー的な「核アレルギー」と原発問題を意図的に混同させることによって、ブレーキをかけようとしているのだ。考えてみるが良い。2011年に成立した復興財源確保法に基づき政府が想定する当初5年間の復興費は19兆円である。年間約4兆円である。これに対して原発が再稼働しないために中東諸国に足元を見られて高い石油や天然ガスを購入させられていることによる国富の流出は年間5~6兆円に達する。福島の事故を理由に、再稼働に反対すればするほど、復興は影響を受けるのだ。坊ちゃん論説委員が机上の空論を唱えているときではないのだ。
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