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2013-04-04 18:45

(連載)イラク戦争から10年:その検証(1)

川上 高司  拓殖大学教授
 3月20日でイラクへアメリカが侵攻してからちょうど10年になる。イラクからは戦闘部隊が撤退し一応戦争は終結したことになっている。だが、民間部門の支援などの人員などが残ってイラク再建の支援をしており、完全に終わったわけではない。イラク戦争とは何だったのか。何のための戦争だったのか。10年間にアメリカやイラクが払った代償をいま改めて考えることは、アフガニスタン撤退の後のあり方を考える上で重要だと思われる。ブッシュ政権はイラクが大量破壊兵器を隠し持っていると主張し、侵攻の根拠としていた。だが、いっこうに大量破壊兵器の存在の証拠がみつからなかった。やがてサダム・フセインがアルカイダとつながりがあると攻撃の口実が変化した。最終的にはイラクの民主化が根拠となった。2003年3月20日には侵攻が開始され戦争は始まった。

 当初ラムズフェルド国防長官は90日で撤退としていた。また、戦費について予算局は500~600億ドルと見積もった。大統領の経済顧問は最大2,000億ドルのコストがかかると見積もったが、あまりに巨額すぎて政権には受け入れられなかった。そして戦争は延々と続いた。実際に2001年から2013年までにかかったコストは約8,230億ドルに達する。そして今後もコストは別な用途で増加する。駐留コストは減少するが、その一方で兵士に対する医療費や恩給などは増加する。結局、今後40年間でかかる退役兵への医療コストなどは7,544億ドルに達すると見込まれている。イラク戦争は終結してもアメリカが払い続けるコストは減ることがないのである。

 もちろん予算の問題だけではない。イラクではおよそ4,457人の米兵の戦死者、1,537人のコントラクター関連の死亡者が出た。負傷者は約74,000人である。彼らは致命傷を受けない限りは前線へと派兵が繰り返し行われた。前線では常に人手不足、装備不足だったため軍が疲弊し脱走兵や自殺者が増加する傾向にあった。帰還兵の社会復帰の問題も社会問題化している。イラク戦争では兵士の不足を補うために州兵を多く派遣したため、そのため州では兵力不足となり州内で起こった災害に対応できない事態に陥った。また州兵が帰還しても元の仕事に復帰できなかったり、地域社会の崩壊につながったりとさまざまな弊害を生んだ。

 イラク戦争を特徴づけるもう1つの点は、民間軍事会社と呼ばれる業界が急成長したことである。戦争で最も名を挙げたのがブラック・ウォーターだろう。後に社名が変更されXeとなっているが、アメリカのメディアでもいまだに旧名で通るほど有名である。ブラック・ウオーターの従業員は元軍人でイラクで要人の警護や物流トラックの警備などを任務とした。装備も腕前も給料も正規軍よりも格段に上で、なくてはならない存在となってコントラクターとして食い込んでいった。他にもダイン・コップスなどの民間軍事会社が多く成長した。彼らは民間人でありながら限りなく軍人に近い仕事をしていてその法的な曖昧さはやがて問題となっていった。(つづく)
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