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2012-06-20 10:11

(連載)増税主義の政治家たちは国家と国民を代表しているのか?(2)

田村 秀男  ジャーナリスト
 今、世界の投資家は日本、米国、ドイツの国債買いに殺到している。当面は最も安全で信頼のおける金融資産というわけである。もとより、政府の総債務の対国内総生産(GDP)比率は日本が飛び抜けて高いのだが、日本国債は最も安全な資産との市場評価を受けている。利回りも国債の焦げ付きリスクも健全財政を誇るドイツよりもよりも低い。

 その理由は、日本が貯蓄大国であり、世界最大の対外債権国であるというのがまず第一点。二つ目は、日本が慢性デフレで、モノやヒトに投資するよりも、現預金やすぐ現金化できる金融資産である国債投資が有利なことだ。国内の金融機関は国債を買い、その売り買いで収益増加分の大半を稼ぐ。外国の投資家もそれに便乗するわけである。その結果が超円高であり、デフレを加速し、国民の所得、雇用機会を奪い、破壊する。

 増税はデフレを助長する。かのデフレ容認派の白川方明日銀総裁ですら、国外での講演では「成長期待が弱い中での増税懸念は、デフレ圧力につながる可能性もある」(4月21日のワシントンでの講演)と認めている。日本がギリシャ化するとすれば、財政収支が悪化を続け、バラマキ型の社会保障制度を温存することである。ギリシャは欧州連合(EU)基準に合わせて付加価値税(消費税に相当)率を引き上げ、それに安住して年金など社会保障支出を野放図に拡大してきた。安易な増税で安易なバラマキを実行してきた。

 デフレと円高が止まらないと、GDP縮小がさらにひどくなる。消費税収入は税率アップにもかかわらず伸びず、所得税、法人税は激減する。財政収支は悪化する。そして、社会保障のほうは、今回の3党合意が指し示しているように、バラマキ型を止める気配が全くない。これについては、かの増税主義の急先鋒、日経新聞ですら、16日の社説で、「これでは穴の開いたバケツに水を注ぐようなものだ」「増税だけが際限なく膨らむ恐れがある」と嘆いている。にもかかわらず、日経社説は「首相は消費増税の実現へひるむな」と主見出しで叱咤するのだから、まるで統合失調症なのだが、それはしっかりした見識と政策哲学が欠如したメディア多数派に共通すると思える。21日までの消費増税採決で、各政治家がどれだけの見識と国家・国民観を持つのだろうか。(おわり)
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