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2012-05-28 06:39

野田は“破邪の剣”を抜くときだ

杉浦 正章  政治評論家
 今週実現する首相・野田佳彦と元党代表・小沢一郎との会談は、煎じ詰めれば消費増税法案という「大局」と、自らの保身という「個利個略」との戦いだ。消費増税法案の民主党内手続きは正規に終了しており、野田はもう小沢に安易な譲歩をすべきではない。またずるずる会談を重ねることも、小沢の引き延ばし戦略に乗ることになる。あくまで一発会談で決着を目指すべきである。小沢が反対の方針を曲げない限り、ここの選択肢は「決裂と解散」の決断しかないだろう。もう野田は“勝負”に出るしかないのだ。こと消費増税法案に関する限り、野田は一貫してぶれていない。これに対し小沢は会談前から「私自身の考え方は変わっていないので、議論は平行線になるかもしれない」と事実上の“決裂宣言”をした。5月27日も「我々が総選挙で何を国民に訴え、何を約束し、政権を任せてもらったのかを忘れてしまったら、政権交代の意味がない」と述べ、マニフェストに盛り込まれていない消費増税法案に改めて反対する姿勢を示した。小沢は破たんしたマニフェストでまだ国民を欺ける、と思い込んでいるように見える。野田は動ぜず、「腹を割って、大局観に立って、理解をいただくような会談にしたい」と、あくまで説得する構えをくづしていない。

 しかし、首相周辺は「もう説得は効かないだろう」という見方を強めている。税制調査会長・藤井裕久は「平行線」発言について、「それでいいと思う」と述べた。「決裂で結構」というのだ。政調会長代行・仙谷由人に到っては、小沢にはほとほとさじを投げたような発言をしている。「政策判断というよりも、いろんな理由から大きな声を出して反対している。少々思慮の足りない方がいらっしゃるにすぎない」と語った。「思慮の足りない」とはよく言ったもので、まるで愚か者扱いだ。小沢が強硬な反対姿勢を崩さない限り、野田にとっての会談は、儀式のプロセスを踏むこと、簡単に言えばアリバイ工作なのであろう。それならそれで致し方あるまい。なぜなら、妥協は小沢の“術中”にはまる危険があるからだ。幹事長・輿石東は小沢の先兵である姿勢を露わにしており、野田は信用すべきではない。小沢・輿石戦略は解散先送りを最大の目標として、解散につながるあらゆる要素を除去しようとしている。大阪城の外堀を埋めるかのように、衆院の定数是正を先延ばしにし、消費増税法案の審議遅延をはかり、通常国会を9月の代表選をまたぐ大幅延長にしようとしているのだ。特に定数問題では朝日が28日の社説で「輿石氏の無責任さにはほとほと、あきれる」と指摘し、小沢が党を割らずに済むように行動していると看破している。

 この遅延作戦の一環として野田・小沢会談を見れば、輿石は、あたかも決裂を避けるふりをして、再会談を繰り返す意図があるかに見える。しかし、ここで再会談ができる余裕があるかといえば、もうない。今週で6月に入り、会期切れの21日までは、実質で半月程度しか審議日程がない。一日も早く衆院の通過を図らなければならない段階であり、再会談などをしているひまはない。話がまとまりそうならぎりぎり翌日の再会談という手はあるが、まとまらないまま無為に日を送る余裕はないのだ。すべてをずるずる遅延させる輿石の“狡知(こうち)”に踊らされてはならない。要するに、野田は、言葉ではなく、決断を、ここで求められていることに他ならないのだ。決断とは、消費増税法案という政策が大局になっている現実を掌握して、成立へと突き進むことしかあるまい。

 ここは、旧制一高寮歌でいくべきだ。「行途(ゆくて)を拒むものあらば、斬りて捨つるに何かある。破邪の劍を抜き持ちて、舳(へさき)に立ちて我よべば、魑魅魍魎(ちみもうりょう)も影ひそめ、金波銀波の海静か」というではないか。「小沢切り」とは、まさに破邪の剣を抜くことだ。抜けば魑魅魍魎は引き下がる。したがって、まず野田は、藤井が言うように、決裂を避けるべきではない。決裂覚悟で最初にして最後の会談と位置づけて臨むべきだ。次に、野田がなすべきことは、解散を決断することだ。野田自身が言うように、法案成立後消費税実施までの間に解散するというのは、論理矛盾だ。大衆が消費税に反対の投票行動に出て、選挙結果が「増税ノー」を突きつけたら、成立した消費税を実施に移せるのか。時の政府は窮地に陥る。したがって、ここは消費増税法案の成立と直近に連動しての解散に踏み切るしか手はない。衆参同日選挙を主張する輿石は反対するだろうが、いよいよとなれば問責2閣僚と共に、改造によって幹事長を更迭するしかない。野田の選択は、小沢との会談を契機に、いよいよ「小沢切り」「内閣改造」「解散」しかなくなってきているのだ。これに踏み切る決断だけが、袋小路の政局に活路を見いだせるのだ。




 
 
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