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2012-05-23 06:49

小沢サイドから「代表選決着」説の流布

杉浦 正章  政治評論家
 首相・野田佳彦と元代表・小沢一郎による「直接会談」の成り行きが焦点となる中で、小沢サイドから「代表選での決着」説が流されている。9月の代表選挙で野田自身と小沢が擁立する候補が消費税の是非をかけて争い、野田が勝てば、小沢も納得するというものだ。消費税は代表選を越えた大幅延長国会か、代表戦後の臨時国会で決着というわけだ。党分裂を回避するにはこれしかないというのだが、野田周辺は「消費増税法案の成立が危うくなる」として警戒している。まず、会談が野田、小沢、幹事長・輿石東の3者会談であることに、野田は懸念を持つべきだ。輿石は明らかに小沢の先兵として動いており、2対1となって不利だ。ここは副総理・岡田克也を交えて、2対2とすべきところだろう。「直接会談」だから、野田が1人では後で「言った。言わない」で問題になる恐れがある。会談は来週にも行われるとみられるが、野田は輿石の時間引き延ばし作戦に乗せられる恐れがあり、言われているように何回も会談を重ねる方式には、よほどの確証がない限り応ずるべきではないだろう。

 そこで野田と小沢のスタンスだが、どう見ても小沢が状況的には追い込まれている。というのも、野田にとっては、小沢が消費増税に応じなければ、「小沢切り」で自民党と手を組むという最終手段があるからだ。「話し合い解散」の選択肢だ。一方、小沢にしてみれば、最大の狙いは野田との「話し合い」で解散を先延ばしにすることであり、まずここで野田に主導権を握られている。「話し合い解散」と「話し合い」で「解散なし」の戦いである。よく言われるように、小沢が党分裂のカードを握っているとは思えない。なぜなら、小沢が新党を作っても発展性がないからだ。チルドレンなどの烏合(うごう)の衆は、再当選する見込みがなく、また小沢と手を組もうという政党もない。新党を作れば孤立・消滅の道をたどるだけなのだ。だから、民主党内での“体制内闘争”しか道はない。ここも小沢の弱点だ。尻が割れているのだ。したがって、小沢の取り得る戦術は、ひたすら“強面(こわもて)”で、消費増税法案の採決を先延ばしにし、解散を遅らせて自らの政治的“寿命”を1日でも長くすることであろう。この小沢の路線上をうごめいているのが側近中の側近輿石である。輿石は小沢の党員資格回復で、まず小沢の強い信頼を得ており、次の狙いは、消費増税法案の継続審議であるに違いない。したがってこの野田・小沢会談は、野田にとって危ういことこの上ないものであろう。

 こうした中で、冒頭述べたように9月の「代表選決着」説が小沢サイドから出ているのだ。輿石も、これに1枚かんでいる可能性がある。消費増税法案は、筆者が指摘しているように、今国会中はせいぜい衆院通過の日程しか見通せない。成立させるには、少なくとも8月の旧盆前か昨年のように8月末までの延長が不可欠である。輿石は、これをさらに延長して、何と民主党代表選後までとしようともくろんでいるというのだ。この“妥協案”の意味するところは、野田・小沢会談では双方の主張が並行してとても妥協点に到らない。したがって、「会談決裂→小沢切り→党分裂」という事態を回避するためにも、ことを代表選での決着に持ち込もうというわけだ。小沢自身は刑事被告人であり、立候補は控えるだろう。代表選をやって野田陣営と小沢陣営の対決となれば、おそらく野田が勝つ。それをみて小沢も矛を収めるという図式だ。小沢も秋以降の解散となれば、受け入れざるを得ないというわけだ。野田にとってみれば、党分裂は避けられるし、小沢の協力は得られるしで、悪い話ではない。ついふらふらと迷い込みかねない“おいしい”道である。

 しかし、ようやく綱渡りで審議入りに持ち込んだ肝心の消費増税法案成立は半年も遅れかねない。今どき半年も遅れれば、どんな落とし穴が待っているか分からない。野田にしてみれば、代表選による決着などは、とても乗れない話しであろう。一方、野党も、民主党内事情による大幅会期延長などにはまず応じない。なりふり構わぬ“野合”として猛反発する。参院で問責決議を成立させる絶好の口実ができ、政局を解散・総選挙に直結させられるのだ。したがって、野田が代表選での決着などという見え透いた“落とし穴”に乗せられる可能性は極めて少ない。野田・小沢会談は平行線で終わり、せいぜい決裂の印象を避けるために、再会談の可能性を残すぐらいが“落ち”かもしれない。筆者が野田の「アリバイ作り」と書いたゆえんである。野田は、はっきり言って、消費増税法案に「賛成する自民党」を選ぶか、「反対する小沢」を選ぶか、の選択を迫られており、最終的には「反対する」小沢を選ぶ選択はあり得ないだろう。
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