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2006-07-24 06:11

米中軍事交流の拡大と米中世界共同管理論

浜崎真一郎  大学教授
  7月18日付け叶芳和氏の「米中による世界共同管理論の台頭:再論」と題する投稿で主張されている主要論点「日本の国際政治力は地に落ちている」との点については、すでに小宮山健二氏が7月21日付け投稿で適切に反論されているので、さらに付け加えることはない。

  他方、私は、最近報じられた米中間の軍事交流の拡大合意に関連し、叶芳和氏の元記事である5月15日付けCEACコラム「米中による世界共同管理論の台頭」本論を想起した。報道によれば、ブッシュ米大統領は、6月20日訪米中の中国人民解放軍制服組トップ、郭伯雄・中国中央軍事委員会副主席とホワイトハウスで非公式会談の機会を持ち、北朝鮮のミサイル発射に対する国連安理決議に賛成した中国を称賛し、「米中の軍事関係の深化は東アジアと世界の利益となる」と表明したという。さらに、同副主席とラムズフェルド国防長官との間で両国間の軍事交流の拡大のため諸措置につき合意し、すでに米軍がグアム島周辺の海域で6月19~23日行った大規模演習に中国の軍幹部らがオブザーバーとしてはじめて参加し、米側は今後中国の軍事演習への米軍関係者のオブザーバー参加を認めるよう求めていく意向とされ、さらに本年中に米中両国軍が合同捜索救難訓練を実施することをも正式に合意したという。

  このような米中間の急速な軍事交流の増大は、叶芳和氏が前記記事で述べられた「米中による世界共同管理論」をまさに裏付けるものであり、米国は真剣にその道に沿って行動を開始したのか、はたまた米国の真意は別のところにあるのか、後者とすればそれはいかなる狙いによると読めばよいのだろうか。

  叶芳和氏としては、おそらく前者の見方をとられると推察するが、私は米国の意図は、必ずしも単純に中国と軍事協力をどんどん推進する方向に戦略転換を行ったというようなものではなく、米側の中国の位置づけは、依然stakeholderとしての認知にとどまり、米政府としては、現在好ましい雰囲気にある中国との協力関係を軍事面でも進め、中国の軍事的能力を実地に調べ、見極めておこうというところに狙いがあるのではないかと見る。中国が、米国勢力の牽制を主たる目的とする上海協力機構を推進し、ロシア等との大規模軍事合同演習を実施する一方、台湾問題の非平和的解決の選択肢を否定せず、中国の人権状況についても大きな変化がもたらされていない現状況下では、米中間の軍事交流・協力には自ずと限度があるべく、東アジアにおける軍事的状況を基本的に変えるものではないとみるのが正しいのではないか。他の見方があれば是非伺いたいものである。 
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