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2012-02-13 06:55

野田は最低年金の「謝罪」が先決だ

杉浦 正章  政治評論家
 何が胸くそ悪いかと言って、政権が国民にうそをつき、それをごまかすことほどむかつくことはない。大阪弁の「けったくそ悪い」がぴったりだ。迷走の末公表した新しい年金制度の試算をめぐる顛末(てんまつ)ほど、国民を愚弄したものは無い。最低保障年金7万円の破たんは、数多いマニフェストの公約破棄のうちでももっとも悪質な部類に入る。首相・野田佳彦はごまかしではなく、まず「謝罪」から入らなければ、与野党協議など進展するわけがない。最低保障年金7万円が、「年金を払っていない人にまで出る」と言って、2年半前の総選挙で圧勝したこと自体がまるで“フィッシング詐欺”であった。同年金についてはマニフェストの最初に明記されており、まさに公約の1丁目1番地だった。誰もが政権が代われば、すぐにもらえると疑っていなかった。問題は年金がわずかしかもらえないか、もらっていない層を狙った悪質さである。哀れにも「年金が7万円ももらえるから」と投票した老人を何人も知っている。

 おそらく幹事長・小沢一郎の「財源など、政権を取ればいくらでも出る。無駄の削減で予算の1割は捻出できるの“空想性虚言”を根源として、財源は16.8兆円確保出来るとの誤算がまかり通っていたのだ。しかし問題は、社会保障と税の一体改革を昨年6月に決めるに当たって、「民主党幹部の間で『最低年金をどうする』ということになり、実現は無理だから理論武装をしようということになった」(民主党筋)というのだ。誰かが「制度改革だから、遠い先になる」とアイデアを出し、そして事務当局に「試算」なるものを作らせた。もちろん実現は遠い半世紀以上先に設定したのである。この結果、「試算」ができたのだ。最低保障年金を導入すると、いまの基礎年金制度を続ける場合に比べて、2075年度で最大25兆円あまりの追加財源が必要となるうえに、消費税10%への引き上げとは別に、新たに7%分の増税が必要になるという「試算」である。要するに、今にも実現するという有権者の思い込みを修正する必要に迫られて作ったものに他ならない。そして今年に入って国会論戦を前にマスコミに試案をリークして、「公表せよ」、「いや公表しない」の論議の過程を経たうえで、結局公表したのだ。「先延ばし定着」のための実に巧妙な操作だが、すぐにばれることが分かっていない。

 何故ばれるかと言えば、物事は原点を見ることだ。有権者は紛れもなく選挙演説で「明日にも実現」と思い込まされていたのだ。当然「話が違う」ということになるが、民主党幹部は「試算」で言い逃れできると思っている事がサル知恵なのだ。そもそも選挙演説で「半世紀後の話です」と断った候補がどこにいたかということだ。すべての候補が「政権取れば実現」で当選してきているのだ。マニフェストに「半世紀後の話」などと「註」がついていたかということだ。つける訳がない。党を挙げての確信犯であった。政権の中でもさすがに正直派がいるが、嘘つき派もいまだに存続している。正直派は政調会長代行・仙谷由人、嘘つき派は副総理・岡田克也だ。仙谷はさすがに逃れられないとみたか、2月5日のNHKで「総選挙で明日にでも実現するような説明をした。もう少し丁寧にやるべきだった。明日から7万円の議論になってしまったことは、訂正して謝罪しないといけない」とあっさりかぶとを脱いだ。一方、偏執癖のある岡田は11日、最低保障年金について「『絶対これは譲らない』と言ったら(与野党)協議にならない」と述べ、与野党協議促進のため、撤回の余地もあるとの考えを示した。

 しかし、撤回の余地もへったくれもない。もともと虚構の最低年金であり、撤回でなく、政権は仙谷のようにに訂正して、謝罪するのが筋なのだ。野田は方針通りに来年、年金改革法案を国会に提出するとしているが、それまで政権が続くのか。来年のことを今言えば、鬼が笑うのだ。自民、公明両党も馬鹿ではないから、虚構の構図はおそらく推察している。だから与野党協議には応じないのだ。野田は消費税率の引き上げ法案の「大綱」を17日に閣議決定し、場合によっては単独ででも国会提出する構えだ。いよいよ将棋で言えば中盤戦激突の火花が散る段階に入る。野田の消費税導入路線自体は正しいが、成立できたとしても総選挙となれば、最低年金で必ず有権者の手痛いしっぺ返しを受ける。それにしても17日と言えば小沢裁判の重要な転機となる日である。元秘書・石川知裕の供述調書が証拠採用されれば、4月の判決は有罪へと向かい、小沢グループは崩壊の危機にひんする。証拠採用されないことになれば、小沢の無罪の可能性も出てきて、またまた小沢が大見得を切って六方を踏む。その日を狙ったわけでもあるまいが、民主党政権にとって厄日となりそうだ。暦は友引とある。朝晩は吉、昼は凶だ。
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