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2011-08-22 20:20

(連載)円高亡国論の裏に既得権益保護の過剰規制温存策あり(1)

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 円高だ。輸出産業は大赤字だ。海外へと生産拠点を移動しなくてはならない。さらでだに雇用減少に悩む日本の産業空洞化が進行すれば、お先は真っ暗だ。「なんとか円高を食い止めよう」と、貴重な税金を円買いに何兆円も投入する。そんなものに効果がある筈もなく、無駄遣いから言えば4Kどころではない筈だが、これはお構いなし。

 要するに、円高イコール悪夢。輸出立国の日本にとっては望ましからざる事態。言い募る財界のリーダーたちは揃ってメーカーの社長さん連(もっとも、最近は代表取締役相談役なんていう奇妙なタイトルが世にはばかっているから、社長さんと限った訳でもなさそうだが)。確かに外貨建てで輸出(輸出全体の6割程度といわれる)していれば、円高はこたえるだろう。新聞報道によればトヨタ一社で、1円の円高は350億円の赤字をもたらすという。それは解らないではないが、天然資源に乏しいわが国が輸入大国であることも忘れてはなるまい。輸入にとって円高は大歓迎の筈だ(円建て比率は4割程度と言われる)が、なぜか「円高、国難、お先真っ暗。何時まで続く円高ぞ」みたいな報道一辺倒なのは、どうしたことか。

 最近の統計を見れば、輸出が81兆円に対して78兆円ほどの輸入、というのが実績のようだ。一頃のように10兆円を超える貿易黒字はなくなっているが、それは新興国経済や日本企業の海外進出もあり、一概に嘆き悲しむ事でもないだろう。それはともかく、円高で被害を被るといわれる額のなんと9割以上、考えようによってはほぼ同額の輸入産業にとって、棚からぼたもちの円高について一切言及されないのは、不思議と言えば不思議だ。どだい自国通貨が強くなって嘆き悲しむ、というのは、どこか国民性の中に幼児性あるいは後進性が残っている証拠と言えなくもない。通貨安を武器に1ドルブラウスを売りまくった感覚である。

 そんなものは払拭するのにさして時間もかかるまいが、何よりも問題なのは、貿易自由化の大波の中で、自国産業保護の美名のもとに、円高の利益が一般国民、消費者に反映されない様な既得権益保護、過剰規制の網の目が張り巡らされてしまっていることだろう。せいぜいで量販店が円高差益還元セールなどというのをやっている、あるいは回転寿司や牛丼やで余慶にあづかるのが精一杯で、円高が即消費生活に反映するチャンネルが目詰まりを起こしている。取りあえず手っ取り早いのは関税の全廃なのだが、既得権益の牙城である農協や農水省の壁は、ちとやそっとでは崩れまい。それにぶらさがっている政治家も少なくないと言うのでは、われわれは当分円高亡国論におつき合いせねばならぬのだろうか。(つづく)
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