国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-08-07 20:54

半端な円売り・ドル買い介入では負ける日本

田村 秀男  ジャーナリスト
 日銀の追加金融緩和と、財務省による円売り・ドル買い介入にもかかわらず、8月5日の円相場は逆戻りした。加えて、日本の介入は、米国株から米国債へのシフトを後押しする。金融緩和のために、日本が及び腰で紙幣を発行しても、失敗する。その無駄なカネの弾が、脆弱(ぜいじゃく)な世界の市場を撃つのだ。政府による円売り・ドル買い介入には、自虐的なからくりがある。財務省が金融機関から円資金を借り入れて介入に充て、最終的に米国債を購入する。今回の介入規模は総額10兆円程度とみられるが、その分、金融機関から貯蓄が吸い上げられ、金融がきつくなり、デフレを助長する。

 さすがにまずいと思ったのか、日銀は資産購入と貸し出しで、合計10兆円の資金を金融機関に流し込む。だが、お札を刷っても、米国債に化けた分を補うだけで、現状維持がやっと。しかも、日銀は最初から、10兆円の財布の中身をばらして百戦錬磨の投機筋と対峙(たいじ)するのだから、勝負はついているようなものだ。

 世界の投資家は、米連邦債務の引き上げ合意後の景気先行き不安の中で、株式を売り、安全性の高い資産である国債などを買う傾向がある。日本政府が率先して米国債を大量に追加購入し、追随を誘うが、長続きはしない。ドル安の中で米国債はいつか突然、逆に売られ、米国はドル、国債、株式のトリプル安に陥る。これが正真正銘の世界金融危機を引き起こす。

 政府・日銀は効果のない介入よりも、規模を問わない思い切った金融の量的緩和への転換に踏み切り、市場でのドル資産買いを促して、円高とデフレを止めるべきだ。王道とも言うべき国内向け政策こそが、米国や世界の金融市場安定に寄与できる唯一の道だ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会