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2011-07-20 12:31

(連載)時宜を逸した日米2プラス2(1)

高畑 昭男  ジャーナリスト
 「中国は東シナ海、南シナ海で航行の自由との関係でいろいろな摩擦を生じている。地域諸国とともに、中国に責任ある建設的対応を求めていく必要がある」(松本剛明外相)「南シナ海の航行問題は地域の緊張をもたらしている。日米が地域諸国と協力してしっかりと対応していかなければならない。尖閣諸島に日米安保条約5条が適用されることを改めて確認する」(クリントン米国務長官)--先月21日、ワシントンで開かれた外務・防衛閣僚級の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、アジア太平洋の安保環境をめぐる討議は、こんなやりとりで進んだことが明らかにされている。

 日米同盟にとって2プラス2の開催は4年ぶりだったが、鳩山由紀夫、菅直人両氏と続く民主党政権には初めての体験だった。正式文書では中国の名指しを避けながらも、閣僚の生の発言を公表することで、日米の真の意図を示そうとしたのは、巧みな演出だったといえる。日米共通戦略目標を全面改定して、対中シフトを鮮明に打ち出し、「航行の自由と海洋安全保障の維持」や「国際的行動規範の順守や軍事活動の透明性を中国に促す」などと明記したことも、当然の対応として評価していい。

 残念だったのは、その開催が繰り返し延期され、最良のタイミングを逸していたことだ。理由の一つは、いうまでもなく東日本大震災だが、これはやむを得まい。問題は、それ以前に何度も先送りされてきたことである。その結果、中国や北朝鮮の脅威に備える日米同盟の抑止力の実効性にも深刻な影響を与えかねない状況を招いてしまった。民主党政権の重大な怠慢といわざるを得ない。

 その第一は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設計画の遅れが決定的となり、ハードルをさらに高めてしまったことだ。2プラス2は、本来、昨年5月の日米合意と同8月の事務協議を経て、「今年早々」(1月~2月)に開くはずだった。名護市辺野古に建設する代替施設の工法や形状を閣僚レベルの正式決定とし、日米首脳会談へつなぐためだ。

 ところが、合意を引き継いだ菅政権は地元を説得する腰も重く、いたずらに時を浪費した。早期開催を望む米側や外務省など事務方の努力にもかかわらず、「政治主導」の決断を下せない。2月が3月に、3月が4月になり、5月になっても開けないていたらくだった。この間に米議会では、度重なる先送りにしびれを切らし、日米合意に逆行する代替案も浮上した。日米合意は普天間の危険性解消だけでなく、在沖縄海兵隊のグアム移転や嘉手納以南の基地・施設返還と一体のパッケージだ。遅れれば遅れるほど沖縄全体の基地負担の削減を阻害し、海兵隊などによる同盟の抑止力強化の妨げにもなることを忘れてはならない。(つづく)
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