国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-06-16 07:36

いくら孫が暗躍しても「7月退陣」は変わるまい

杉浦 正章  政治評論家
 誰が新エネルギー政策で首相・菅直人に入れ知恵しているのかは、うすうす感づいてはいたが、黒子が表舞台に躍り出て鮮明になった。超党派の議員らの集会でソフトバンク社長の孫正義が、菅に「土俵際で粘り通して、この法案だけは絶対に通してほしい」と自然エネルギー電力買い取り法案の成立を促したのだ。孫は、このところ菅との接触を頻繁に繰り返しており、先のサミットで菅が表明した「太陽光パネル1000万戸計画」も、担当相の海江田万里は全く知らず、確実に孫の入れ知恵という見方が強い。新エネルギーばかりか、財界の総意とは逆に「早期退陣阻止」に動いて、会合の度に菅を「粘り抜いて」と励ましていたであろうことも、十分うかがえる。あらゆる事象をビジネスチャンスに結びつける“動物的嗅覚”が、「フクシマ」を契機に自然エネルギーにいち早く着目、菅にすり寄って「政権延命を狙う」という構図だ。

 孫が「政商」としての側面をあらわにしたのだ。それも公然と法案成立を促すとは驚いた。胡散臭いという見方が当然出てもおかしくない。孫の総資産から言えば、ポケットマネーの義援金100億円など、“自然エネルギー”への関与ですぐに元を取ってお釣りが来る計算だろう。菅は、孫のエールに乗って「この法案を通さないと、政治家としての責任を果たしたことにならない。国会には『菅の顔だけは見たくない』という人がいる。本当に見たくないなら、早くこの法案を通したほうがよい」と述べた。またまた「延命策」を思いついたのだ。しかし、菅の悪あがきもそろそろ“決着”へ向けて収れんし始めた。大きなポイントであった赤字国債発行の特例公債法案成立のめどがつき始め、会期を大幅に延長しても、途中で退陣させる方向が固まったからだ。問題は3か月の延長会期、つまり9月末までのうち、どの時点で退陣するかだ。

 政府・与党は約2兆円規模の第2次補正予算案を7月中旬までに国会に提出、同月中の成立を図る。第3次補正予算案はお盆明けの8月下旬に国会提出、9月初旬の成立を図る方針だ。退陣の時期としては、2次補正編成終了時か、同補正成立時のいずれかになる可能性が強い。岡田が「菅総理大臣は『めどがついたら辞める』と言っており、会期の大幅延長と、どこかの段階での交代は矛盾しない」と会期途中での退陣を明言したが、途中退陣を言うからには、お盆明けや9月に入ってからということはありえない。岡田の狙いもせいぜい「7月下旬の2次補正成立を花道にする」ということだろう。岡田は辞めない場合には、直接菅に退陣を諫言(かんげん)して差し違える覚悟のようだ。しかし菅は、このところ「粘れば粘れる」とばかりに、延命に自信を付け始めた感じが濃厚だ。外国人献金で退陣不可避の状態に追い込まれたときに発生した大震災は、不遜にも菅にとって天佑神助以外の何物でもなかったのだ。以来大震災関係のあらゆる問題を“活用”して居座り続けるという、政治家としてあってはならない態度を維持している。今後もそのチャンスをうかがい続けるだろう。国民新党代表の亀井静香が内閣改造を進言しており、捨てておけば「死に体首相」が改造までやりかねない。

 この菅にとどめを刺すのは容易ではないが、ここは攻める方も粘り腰で行くしかあるまい。6月20日にも開催される与野党党首会談、21日にも予定される民主党両院議員総会などでボディーブローを与え続ける必要がある。場合によっては、岡田ら党役員と閣僚の連袂(れんぺい)辞職も致命的な打撃になる。この点については、次期代表候補の財務相・野田佳彦が15日「特例公債法案との引き換え辞任」に言及したのは、興味深い。特例公債法案について「もし私が首を差し出してそれが成るなら、そうしてもいい」と辞任も辞さない考えを表明したのだ。閣内からこうした声が澎湃(ほうはい)として起きれば、さすがの菅も身動きがとれなくなる。戦い方はいくらでもあり、菅はいくら何でも7月には、観念して年貢を納めざるを得ないだろう。
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会