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2011-05-13 10:29

大きく進む世界を見据えた米中の「戦略対話」

石垣 泰司  アジアアフリカ法律諮問委員会委員
 5月9~10日の両日ワシントンで開催された米中第3回「戦略・経済対話」については、本邦紙では断片的に報じられただけで、「人権問題についての米側主張に中国は聞く耳を持たなかった」といった扱いが多かったが、実際には、当初より米側として中国側よりの譲歩を期待していなかった人権問題以外の広汎な分野で、米中間の政治安全保障・経済対話が大きく進み、かつパイプが強化されたことが注目される。わが国官民が大震災・原発事故への対応・復興に関心を集中し、内向きとならざるを得ないなか、東アジア地域についての米中戦略対話は着実に進展している。われわれは、このような世界の新たな動きを見逃してはならない。

 米中の「戦略・経済対話」は、2009年オバマ大統領と胡錦濤主席のロンドンG20出席の折りに合意され、第1回がワシントンで開催されたものである。翌年第2回が北京で開催された際は、米側から閣僚を含む総勢200名の政府要人が参加し、「まるで米政府がそっくり北京に引っ越してきたかのごとき観がある」と報道されたりした。この米中対話は、米側は国務長官および財務長官が主役となり、「経済対話」の名が示すように、当初主として貿易、投資、金融等の経済問題についての対話に力点が置かれていたが、回を重ねるにつれ、政治安全保障問題の比重が大きくなり、今般の第3回では、初めて、双方の軍関係者も正式メンバーとして参加し、中国からは、人民解放軍(PLA)副参謀総長ほかが出席した。

 今回の「対話」では、米中関係の戦略的互恵関係発展のため48の合意(10万人の人的相互交流計画を含む)が達成された旨発表されたが、米中2国間関係のみならず、欧州金融危機、気候変動、地球環境、エネルギーを含むグローバルな諸問題を討議し、日本の原発事故問題についても意見を交換したという。戦略安全保障に関する「対話」は、米側クリントン国務長官、スタインバーグ同副長官、フロノイ国防次官ら、中国側戴秉国外交担当国務委員、張志軍外務次官、馬暁天PLA副参謀総長らが参加して行われ、北朝鮮等アジア太平洋地域問題のみならず、中東情勢、イラン問題を含む多数の具体的な諸問題を取り上げたとされる。

 「対話」後に発表されたところによれば、米中両国は、2国間の「戦略的信頼」関係を今後とも大切にし、今秋の東アジア・サミットやハワイでのAPEC首脳会議等の機会を利用し、首脳会談を行う一方、バイデン副大統領の訪中、習近平副主席の訪米を実施するほか、新たに「アジア太平洋地域問題に関する協議」メカニズムを創設し、一層緊密な対話に努めることに合意したという。米中両国が意思疎通を良くすること自体は結構なことであるが、このような情勢のなか、日本としても同盟国米国との協議を更に強化し、地域情勢についても知見を深めてゆかないと、東アジアにおいて期待される役割を十分に果たせないことともなるであろう。 
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