国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-11-25 09:59

今こそ、日本は「アジア太平洋平和構想」を提唱せよ

吉田 重信  歴史研究者
 最近、欧州情勢は、NATOのロシアへ接近の動きもあって、冷戦体制から協調体制へと移行しつつあるようだ。ところが、アジア太平洋情勢には、今回の朝鮮半島情勢の悪化も加わって、1950年代以降の「冷戦体制」の復帰へ向かう動きが加速されている。半島情勢の緊張に加えて、米中間にも緊張が高まっている。また、中ロ間には、かつての「中ソ同盟関係」への復帰が露骨にも喧伝されている。さらに日中と日ロ関係の先行きも全く透明である。かかる情勢において、日本はいかに対応すべきであろうか?

 1950年代の「冷戦構造」においては、米国の占領下にあった日本は、米国にただただ追随し、米国が主導したソ連と中国をめぐる「封じ込め」(containment)網の一端を担ぐしか選択はなかった。しかし、今や、日本はかつてと同じく、米国に追随して、新しい「封じ込め」網に加わるべきではないと考える。何故なら、往時と比べ、日本の国力や対外的な影響力は、格段と充実しているからである。ここに、日本が、米国とは離れ、独自の外交を展開できる余地がある。かってのドゴール仏大統領とアデナウアー独首相は、米国と協調しつつも、裏ではしたたに対米独自路線を追求した歴史的事実が想起される。

 今後、日本が対米独自路線を追求するための不可欠の条件は、中国との関係をよくし、「同盟関係」に準じるような関係にまで高めることだ。欧州においては、独仏の「歴史的和解」によって、独仏「同盟」が成立したことにより、独仏同盟関係がECの中核となった。また、そのことによって、独仏それぞれが米国に対し自主独立の動きをすることが可能になった。米国がイラクに進攻した際、同じNATO加盟国であったはずの独仏両国政府が、あからさまに米国の政策に反抗することができた「秘密」は、このような「独仏同盟」にあったからに相違ない、と筆者は考える。

 日本は、アジア太平洋情勢が新たな「冷戦構造」に復帰するのを防ぐために、新たな「協調体制」を築くべきであり、そのための貢献ができるチャンスが到来していると考える。具体的には、「東アジア不戦条約」や「東アジア非武装地帯構想」もアジェンダに出てこよう。他方、日本の一部政治家や言論人の中には、このような情勢において、「日本は核を含め軍備を増強すべし」と説く者がいるが、かかる言説は、歴史の潮流に逆行するものである。今こそ、日本は、「冷戦構造」に代えて、平和憲法を体現させる「アジア太平洋平和構想」の実現を率先して説くべきときである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会