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2010-11-17 11:11

北方領土問題は「原則論固持」以外に選択肢なし

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 中国の次はロシアだ。まさか示し合わせて民主党内閣を揺さぶっているという話でもなかろうが、こちらの方は「実効支配」のデモンストレーションだけに、手も足も出ないもどかしさは一入だ。漁民に移住されても、地熱発電所を作られても、ビザなしで人目をはばかって上陸させていただくくらいが関の山で、お定まりの「国際世論に訴え」てみても、全く一顧だにされない。これでは、ただ虚しさだけが色濃く残る。ロシア経済が不調で、シベリア開発に日本の協力が唯一の頼りだった頃は過ぎて、日本経済は不調、天然資源獲得に先進諸国が血眼になってくれば、北方諸島について余り日本を刺激したくない、という気遣いは不要になりかかってくる。

 百年待っても四島返還に応じる相手ではないのなら、「いっそ二島で、いや三島で手を打つ方が賢明ではないか」とも思うが、そうとはゆかないのが領土問題の悩ましさである。ことは単なる現実的な経済利害だけでは割り切れない問題だからだ。話し合いによって相手の理性に訴えようにも、中国ほどではないにしても、開かれた民主主義国とはとても申しかねるお国ぶりであってみれば、こちらの言い分を相手国のメディアに流すなどは金輪際期待できっこない。さりとて、あの國の言論が西側並みに自由になるのを待つというのでは、これまた気が遠くなる様な話だ。要するに打つ手がないに近い。

 「取りあえず二島だけ返して頂き、残りはゆっくり議論を」というのも、手のうちを見透かされて「それには応じない」というのだから、まさに八方ふさがりというべきだろう。現在の日本外交というのは、要するに「筋の通らない妥協はしない」、つまり「四島全部が帰ってこなければダメだという態度を貫くこと自体に意味がある。その結果、二島さえ日本の実効支配下におけなくても、それはやむを得ない。未来永劫に四島は、日本固有の領土だと言い続けることに意味がある」という立場だ。「それによる実害は軽微であり、なまじ原則論を放棄することによって受けるダメージの方が遥かに大きい」と判断している訳だ。

 第二次大戦終結時のあらゆる国際法を無視したソ連の蛮行の果実だけが、ロシアに継承されている。この國との間にはまだ第二次大戦の戦後処理が終わっていないのだ。民主党政権は、鳩山首相の信ずべからざる愚行によって、この問題を解決する緒を完全に放棄した。当分は解決能力がないと見るのが妥当だろうし、無定見に解決を目指されたりしたら、それこそ悔いを千載に残すことになる。「解決策はない」という既成事実を作るのが、これまでのロシア外交の要諦だったし、当分はそれが変化することを期待する理由もない。日本がとりうる選択肢の数はそんなに多くはないのだ。
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