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2010-07-29 10:17

中台経済協力枠組み合意をどう読むか(再論)

岡崎研究所  シンクタンク
 中台経済協力枠組協定(ECFA)について、『エコノミスト』誌7月1日号が社説を掲載しています。それによると、「ECFAが中台統一に向けての一歩になるという懸念は、中国側の意図の読みとしては正しい。しかし、この協定には、(1)輸出立国の台湾の利益になる、(2)台湾の世論は圧倒的に現状維持派であり、今回の協定が台湾の政治に与える影響は限定的だ、(3)中国国内のタカ派に対して、少しずつだが統一に向かって進捗していると示すことが出来る」という3つの利点がある。中国は、今後とも、今回のように、武力の威嚇ではなく、経済的利益で、台湾を誘惑するECFA型政策を取るべきだ」と論じています。

 ECFAについては、台湾の内外で賛否両論の対立が激しく、中庸を得た論が乏しい中で、これはバランスが取れた議論であると思われます。また、その論点の多くについて、当研究所も同様の感触を持っています。第一に、台湾の世論は中国の思惑に対して十分に警戒的だと思われます。激しい反対デモが行われたこと自体、ECFAの今後の影響について抑止効果があるでしょう。現状では、ECFAは、国民党が公約した和平協定の締結に向けてのハズミとはならず、むしろ、ECFAに対する激しい反対は、2年後の総統選を控えて、国民党に和平協定推進を思い止まらせる効果があったのではないかと思われます。

 第二に、経済の相互依存度の増大による将来の統一の可能性を掲げることが、中国内において、強硬派を抑えるのに大きな効果を発揮することは、容易に想像できます。中国の人は、たとえ共産党員であっても、戦略的、長期的な考え方に反応するところがあります。

 これで、上海万博が終わって2012年の総統選までは、中国による武力行使・脅迫の可能性は減少し、中国も、国民党も、次の総統選のための選挙対策という、民主主義の枠内のゲームに集中するしかなくなるのではないか、という見通しが許される状況になって来たように思われます。もっとも、それも、中国の軍事力増大によって、中国の武力行使が成功する可能性が出て来るまでの間のことですが。
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