国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-07-26 13:29

中台経済協力枠組み合意をどう読むか

岡崎研究所  シンクタンク
 『台北タイムズ』紙が、その6月29日付社説で、中台間の経済協力枠組み合意(ECFA)について、「非民主的な方法で結ばれた恥ずべき危険な合意だ」と真正面から批判しています。すなわち、「通常経済協定は締結までに何年もかかるのに、今回の協定は6ヶ月もかけずに、非民主的な方法、つまり、公平さを保証するWTOの傘の下ではなく、秘密交渉で結ばれ、国民党が4分の3を占めるラバー・スタンプの議会で審議されただけだった。野党は国民投票を要求したが、政府は納得できない技術的理由で拒否した。こうなったのは、2008年の選挙で、台湾の人々が、大陸との統一の夢を捨てない国民党を選んだからだと言える。もっとも、国民党は李登輝の下で台湾化していたし、選挙民は、党内の親北京派が国民党を牛耳るとは思っていなかった。その李登輝自身は、ECFAと馬英九への反対を明らかにしている」と述べ、「台湾人は国民投票によって、自らの将来を決する権利がある」と結んでいます。

 新聞などで報道されているECFAの減税の品目数などを見ると、少なくとも表面的には、中国側の譲歩の方が大きいようです。中国は、細かい経済的実益よりも、平和攻勢の効果の方に重きを置いた感があります。しかし、『台北タイムズ』がこれだけ正面から反対し、李登輝氏も反対を表明したということは、作成の過程において、この社説が言うように、親中国派が主導権を取った事実があるのかもしれず、それに対する反発も含めて、危険なものを内蔵する協定である可能性はあります。

 いずれにしても、中国は人治国家であり、協定の文面だけから今後を予測することは危険を伴います。やはり、成り行きを見極めるしかないでしょう。ただ、今回の合意については、より根本的なところでさほど危機感を持たなくてもよいのではないかと思われます。と言うのも、経済関係というものは、いかに密接になっても、重大な政治的決断に影響を与えた歴史的例は無いからです。第一次大戦前も、欧州各国の経済関係がこれほど密接になった状況で、「もはや戦争は無い」と言われ、それが大戦前の西欧文明爛熟期のインテリの通念だったようですが、戦争開始時のカイザーやツァーは勿論、英仏など欧州列強の首脳の頭の中には、経済相互依存に対する考慮などは、カケラもありませんでした。

 中国が一党独裁国家であり、台湾が自由民主主義国である限り、いかに経済関係が密接であっても、台湾の指導者が中国の主権を受け入れることは考えられません。今回の合意で、中国側が政治的計算から持ち出しのサーヴィスをしたのなら、台湾はそれを有難く頂戴しておけばよいだけの話でしょう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会