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2010-05-18 07:41

「首相発言」では、内閣の正統性が問われる

杉浦 正章  政治評論家
 ごまかすとは「ごまのはい」のごまに、「まぎらかす」「だまかす」のかすを付けたものと、大言海にある。本来閣議決定すべき普天間移設問題の決着を、政府は社民党の連立離脱を防ごうと「首相発言」でお茶を濁そうとしている。鳩山政権の欺瞞(ぎまん)性にはもう驚かないが、こともあろうに内閣最大の政治課題で、本当にごまかしを押し通すのだろうか。ごまかしても、普天間移設そのものは事実上決定される。閣内の反対をうやむやにして、「決定」を形成するのは、内閣の正統性の毀損行為に他ならない。

 官房長官・平野博文は記者会見で「首相発言案」について「逃げ場をつくるようなことはしない。政府の意思を決めるのであり、小手先の話はやるつもりはない」と発言しているが、人間常々そうしたいと思っていることを、ついしゃべってしまうものらしい。まさに「逃げ場」作りであり、「小手先」の話に他ならない。昨年の「普天間に移設すれば、政権を離脱する」と首相・鳩山由紀夫を脅して、方向転換に成功した社民党党首・福島瑞穂は、今度は閣議了解に反対する方針を表明。慌てた鳩山が、会談してなだめている、というのが今の図式だ。

 こうした中で平野は「閣議決定」はおろか、「閣議了解」でもない「首相発言」で、決着させる構想を明らかにした。閣僚全員の署名が必要な閣議了解でなく、首相が閣議で発言したことにより、5月決着を実現したことにしようというわけだ。歴代政権は、普天間問題を閣議了解の軽い対応でなく、閣議決定で対処してきた。対米交渉もある問題に、あやふやな対応をしては、交渉担当者の腰も定まらないから当然である。しかも、閣議は議事録を残さないから、首相発言がどのように行われ、これに福島がどのように反対したのかも、実際には秘密のベールに包まれる。もし反対したとすれば、明確なる閣内不一致であり、内閣としての決定事項とは言えまい。首相のいい放し発言を、あえて事実上の「決定」と称するならば、内閣の正統性に瑕疵(かし)が生ずることになる。正統性を毀損する行為だ。

 「首相発言案」で出てくるイメージは「トリッキー政権」そのものであろう。野党時代なら、ごまかしの政治決着も日常茶飯事であっただろうが、どうもこの内閣は、政権を掌握してからも野党政治を継続しているように見えてならない。国民はたまったものではない。重要な点は、「首相発言案」でハードルを低くしようとしても、政府の方針自体は普天間移設へと動くのである。本来、連立の中で明確に反対している政党があれば、鳩山はこれを切ってでも、「閣議決定」しなければならない問題だろう。一方で社民党も、普天間移設に真っ向から反対している以上、「首相発言案」を受け入れれば、ごまかしに乗ることになり、県内移設絶対反対の“党是”に明確に反することになる。これもごまかしは利かない。福島の本心は、政権の“蜜の味”に浸りたいということなのだろうが、ここは連立を離脱してけじめをつけるべきである。政権と社民党双方に欺瞞が成立しうる状況だ。背後には、またしても院政の影がある。参院選を前にして、選挙協力のある社民党の政権離脱は何としてでも避けたい、とする幹事長・小沢一郎の強い意向が作用しているのだろう。
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