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2010-05-10 07:34

「呆然内閣」、「唖然内閣」、そして「愕然内閣」

杉浦 正章  政治評論家
 連休開けの政局は、先に筆者が指摘したシミュレーション4パターンのうち、「鳩山も小沢も辞めない」というパターンのスタンスで、まずはスタートするだろう。これが月末までの3週間、変幻自在のパターンを描いて、攻防が展開され、食うか食われるかの段階に入る。焦点は、政権の抱える「普天間」と「政治とカネ」に対するマスコミ・有権者の憤りに民主党内部の反小沢勢力が呼応するかどうかだ。野党とりわけ自民党の動きなどは、ほんの脇役で、突っ張りにもなるまい。内閣不信任案を出しても否決されるだけだ。むしろ自民党は、現体制のままの参院選挙が、衆参のねじれを達成するためには理想の形と考えるかも知れない。

 3月29日に予測した4パターンは、あちこちで活用されているが、TBSの「時事放談」は9日に至るまで毎週4回にわたってパネルで掲載している。そのシミュレーションは、(1)首相・鳩山由紀夫と幹事長・小沢一郎の同時辞任、(2)鳩山辞任・小沢留任、(3)小沢辞任・鳩山留任、(4)鳩山・小沢体制のまま参院選へ、というものだ。この4パターンは依然生きている。永田町の注目点は、鳩山が5月4日に訪沖する前夜の小沢・鳩山会談で何があったかだ。まだどこからも確たる情報が出ていないが、おそらく連休明けの政局について、突っ込んだ意見交換、意思疎通をしたのだろう。小沢と鳩山の関係を見れば、小沢が普天間での発言を避け、鳩山のリーダーシップ不在を指摘しているように、若干小沢が距離を置き始めているように見える。しかし現在のところ、根底では究極の相互依存関係にあると見るべきだろう。つまり、小沢にしてみれば、鳩山が政権を投げ出せば、鳩山は党代表であり、幹事長だけ残留することは極めて難しくなる。あえて予想すれば、5月3日の会談では小沢は、鳩山が辞任を口走らないように事前の口封じをした可能性が強い。その図式は「小沢おんぶお化け」が、鳩山にしっかりと取り憑いている状態だろう。鳩山が辞めなければ、小沢も辞めないで済むのだ。

 まさに一蓮托生の姿だが、訪沖でいみじくも露呈された鳩山の首相としての資質の欠如は、驚くべきものがある。明治維新の藩閥・官僚内閣を「超然内閣」と言うが、鳩山の「学べば学ぶほど抑止力が分かった」発言には「呆然(ぼうぜん)内閣」と言わざるを得ない。「県外移設は党の公約ではない」で「唖然(あぜん)内閣」の様相もある。表面だけでなく民主党政権の根底には「欺瞞(ぎまん)政治」があると断ぜざるを得ない。秘書が3人も逮捕されて説明責任を果たさない幹事長、枚挙にいとまがないマニフェスト違反、そして普天間移設で繰り返された首相の虚言。鳩山は説明責任を求められるたびに、「国会で決めること」と反論するが、これも欺瞞(ぎまん)の最たるものだ。衆院308議席の党の代表が説明責任を果たすと言えば、国会は直ちにその方向で決まるのである。

 「信なくば立たず」の格言は無視され続けている。鳩山も小沢も恐るべき厚顔無恥であり、ここまで追い詰められて退陣しない政権は戦後珍しい。読売の世論調査では内閣支持率は24%に下落した。同社調査で30%を割った橋本、宇野両内閣はともに参院選で大敗し、首相は辞任に追い込まれた。鳩山内閣は、このまま参院選まで辞めず、国民が愕(がく)然とする「愕然内閣」となるのだろうか。しかし相変わらず民主党内の動きは鈍い。国交相・前原誠司と国家戦略担当相・仙谷由人は5月2日、外遊先のベトナムで政局をめぐる密談をしたとされているが、その後に出て来た話は、仙石も前原も普天間5月決着にはこだわらないと言う方向だそうだ。行政刷新相・枝野幸男も5月末決着が退陣につながらないという考えだ。非小沢・反小沢のまとめ役渡部恒三は、いまのところ「幹事長の進退は首相が決めること」と“達観”している。5月9日のテレビでも「側近が悪い」として、「私が首相の政務秘書官になろうかと思う」とうそぶいている。“外野”も外交評論家の岡本行夫が9日のNHK番組で「5月末決着は無理」としながらも「今までやって来た総理大臣がやり抜くべきだ」と退陣論を真っ向から否定、異様な印象であった。

 筆者は昨年から「現体制のままの参院選挙のほうが、自民党にとっては有利」と指摘してきたが、内閣不信任案を否決させたままで参院選に突入した方が、野党全体にとって有利であることは確かだろう。責任を取らないことへの閉塞感が参院選で一挙に“爆発”するからだ。民主党内では、連休で選挙区からトップ交代を強く求められた議員らが国会に戻り、ざわめきが増幅しようが、現段階はマスコミが先行している状況だ。民放テレビは、政権発足時の礼賛ぶりは忘れたかのように鳩山政権を見放した感じであり、主要全国紙の社説も「退陣要求寸前」の論調だ。支持率も10%台入り寸前だ。この波涛を平然と乗り切れるのは、異常な判断力の持ち主でしかあり得ない。自民党政権末期の一連の首相交代劇以上に厳しい状況であるからだ。それこそ“宇宙人”そのものでなければ無理だ。
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