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2010-04-14 07:35

鳩山よ、普天間「5月決着」断念を表明せよ

杉浦正章  政治評論家
 何のことはない、「5月決着絶望」を確認するために訪米したことになる。大統領・オバマは鳩山が信頼に足る政治家かどうかを読み切って、トラスト(信用)せずに、何ら言質を与えなかった。たしかに普天間問題をめぐる一連の首相・鳩山由紀夫の言動は、軽さを通り越して、欺瞞(ぎまん)政治の段階に入っていた。発言のすべてが、何か解決策があるように“みせかけ”て、“取り繕う”傾向に満ちあふれていた。マスコミや国民が首相発言の真否を見分けるのに費やすエネルギーは、膨大なものになりつつある。もう欺瞞政治はやめて、首相は正直に5月決着の断念を表明し、責任を取るべき段階に入った。

 党首討論では「私には腹案がある」と述べて、思わせぶりに世論を誘導。大統領との会談後も、記者団から感触を聞かれ、「感触も申し上げられません。えへ。言葉を全部読まれますから」といわくありげに笑って見せた。しかし10分の会談の5分をイラン問題に費やし、米側の発表では普天間のふの字も出なかった。大統領の感触を得るような会談が成立したか疑わしい。何もないのにいわくありげに笑う。三文役者の演技はもういい。昨年末の首脳会談で「トラスト・ミー」と発言して大統領を納得させ、12月の国務長官・クリントンとの会談では決着先送りを「理解いただいた」と述べて、同国務長官を激怒させた。クリントンは大使を呼んで抗議した。対米外交でも、対国民への説明でも、鳩山の稚拙な欺瞞政治はもうこりごりだ。政権運営の経験が乏しいでは済まされない。

 こうした鳩山の“危険性”は、国務省からホワイトハウスに十分伝わっており、これが胡錦涛は公式90分、鳩山は非公式10分の露骨な“差別”となって現れた。すべてが鳩山個人の“属性”に起因しており、米政府に対日軽視の観点はない。米政府の普天間問題への対応は、国防長官・ゲーツの「政治的にも持続可能な案」に尽きる。つまり地元から了承を得られない案を持ってきても、交渉には応じないということだ。それにもかかわらず外相・岡田克也が米側に提示した案は、鳩山と官房長官、外相、防衛相ら政治家ベースでまとめられ、事務当局が関与していないものだった。もちろん地元の了解などあり得ようもない。だから米側からは「案とは言えない。ボールはまだ日本側にある」との拒絶反応を受けているのだ。米側は戦略眼のある、また専門知識のある外務・防衛当局の専門家の意見・見解が入っていないことを見抜いているのだ。

 こうして徳之島やキャンプ・シュワブ陸上部への移設案は、完全にデッドロックに乗り上げた。朝日新聞が社説で「鳩山首相にもう後はない」と述べるに至っている。政権内部には危機感が台頭しており、官房長官・平野博文は五月末決着の定義を言い始めている。「こういう方向で詰めるという合意」でも決着だというのである。しかしここまで来ての欺瞞は、もはや利かない。決着とは移設先が日米間、政府と地元間で完全に合意に達する事と、政界も国民も理解しているのだ。なぜなら鳩山がそう説明してきたからだ。鳩山に残された道は、国家のリーダーらしく、欺瞞の対応を即座にやめ、現状を正直に国民に説明して、5月決着を断念することしかあるまい。幹事長・小沢一郎は普天間では発言を避けているが、事態の深刻さには気づいているのだろう。13日夜の会合でも「いろいろ難局もあるかもしれないが、それを乗り越えて参院選につなげていきたい」と述べている。「難局」が普天間政局にあることは明白であろう。
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