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2010-03-25 11:23

米国は、中国のASEAN進出にどう対抗すべきか

岡崎研究所  シンクタンク
 米ヘリテージ財団のウェブサイト2月24日付で、Walter Lohman 同財団アジア研究センター所長が、「米国のASEAN政策は中国に遅れをとっている」として、種々の提案をしています。なお、Lohmanは、ヘリテージに来る前にU.S.-ASEAN Business Councilの副会長を4年務めており、ASEANとの経済問題に精通した人物と思われます。

 すなわち、Lohman は「中国のASEAN進出は1997年の経済危機の際に、人民元を切り下げずにASEANの復興に協力したことから始まり、その後、2002年の経済枠組み合意をはじめ、種々の取り決めを結び、2003年以降、ASEANと中国の貿易は平均年率で26%成長してきた。サービスや投資の自由化は遅れているが、貿易の自由化だけでもその効果は絶大だ。中国が米国をリードしているのは、一つには中国がASEAN 流を受け入れ、忍耐することを知っているからだ。対中FTAなどは、10年もただ話をするだけで来ている。しかし、米国には見えないところで、中国とASEANの経済統合は15年間も進捗している」と述べ、さらに次の通り提案しています。

 「米国は、(1)ASEANの主要関心事は貿易だということを認識する、(2)すぐに出来ないことでも長期的ヴィジョンを持ち、中国がしているように、まず理念、ついで交渉、そして実施というプロセスで進み、理念はすぐ実現しなくても、触媒となれば良い、(3)杓子定規でなく、柔軟になる、(4)既に出来上がっている経済秩序には抵抗せず、それに乗ることを考える、(5)米ASEAN首脳会談を年次行事にして、米国とASEAN関係を深める、等をすべきだ」との提案です。また、「中国はASEAN諸国にその影響力を効果的に伸ばしている。ASEAN諸国にとって当面の関心は安全保障ではなく、経済であり、米国が供与する安全保障だけでは、経済的利益の代わりにはならない。貿易という具体的な利益を提供することが必要だ」と結んでいます。

 ホノルルにおけるヒラリー・クリントンの演説から察すると、米ASEAN首脳会談を定期化しようとする意向は、米政府内では固まっている感があります。日本がこの動きから疎外されないためには、「東アジア共同体に米国を入れない」という趣旨の日本政府の発言を何らかの形で軌道修正しておくことも考えるべきでしょう。中国が東アジア共同体に米国を歓迎するとの意向を表明していることを考えるとなおさらです。
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