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2010-03-16 21:11

(連載)冷戦終焉後の日本政治を考える(1)

袴田 茂樹  青山学院大学教授
 地中海のマルタ島沖で米国のブッシュ大統領(父)とゴルバチョフ大統領が冷戦の終結宣言をしてから、早くも20年になる。冷戦後の20年間を振り返りながら、現在の日本政治や鳩山政権の在り方について、とくに国家主権や安全保障の問題を中心に考えてみたい。

 今から振り返って考えると、冷戦時代は世界がより安定していた時代でもあった。東西陣営という枠組みの中で、主権国家間の衝突や国益のぶつかり合いも、民族紛争も、かなり抑制されていたからである。その枠組みがなくなった冷戦後は、国際的な秩序はかえって不安定となった。アフリカや中近東、東欧やバルカン地域、グルジアなど旧ソ連地域では、冷戦時代よりもこの20年間の方が紛争、混乱はより深刻になっている。ボスニアやコソボの凄惨な事件は冷戦時代には考えられなかった。エネルギー資源や領土、領海をめぐる主権国家間の確執、つまり国益の衝突も、冷戦時代よりも厳しくなってきている。冷戦時代にはむしろ後退していた、主権国家とか国益、無秩序という要因が、今日ではよりストレートに国際社会に出てくるようになっているとも言える。

 今日の時点で言えることは、一般的に経済、情報、その他の分野でボーダレスであるグローバル化の諸傾向が進んでいるのも事実だし、欧州では国家統合も進んだ。国家という枠組みでは対応しきれない諸問題も多いということも事実だ。しかし、国民国家とか、国家主権あるいは国益といったものは、もはや過去のものになった、というのは大きな錯覚である。例えば、まさにグローバルな立場からの対応が必要な地球温暖化とか環境保護の問題に関しても、国連や国際機関、国際会議などでは、各国の国益が激しく衝突しているのは周知の事実である。

 米国も、ロシアも、ある意味で楽天的なナイーブさを持っていた。米国の場合、世界各地で独裁体制とか、テロ政権さえ打倒すれば、そして選挙さえちゃんと行えば、その地域にすぐにも民主主義の政権や秩序が生まれる、という楽天主義を有していた。現在イラクやアフガニスタンで、米国は自らの楽天主義と認識の甘さを、大きな痛みをもって思い知らされている。ロシアでも、かつてエリツィンや改革派は共産党の独裁体制さえ倒せば、短期間に民主主義と市場経済の先進国に追いつくことができると考えていた。ゴルバチョフも、エリツィンも、全人類的価値とか欧州共同の家といった理念を信じた。(つづく)
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