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2009-10-26 10:25

(連載)羽田国際ハブ空港化問題について(5)

関山 健  東京財団研究員
 少子高齢化が進行する日本は、アジア諸国や新興経済国との経済一体化により成長を目指す道が避けられない。2007年5月に政府がまとめた「アジア・ゲートウェイ構想」も、「アジアの成長と活力を日本に取り込み、新たな『創造と成長』を実現する」ための「重要な戦略インフラ」として羽田空港の国際化を打ち出していた。たしかに周囲を海に囲まれている日本にとって、貿易や観光など国境を越えた経済活動を陸路で行うことはできず、特にヒトの移動においては、時間がかかる海路よりも、空路が圧倒的に重要である。

 なかでも日本の政治経済の中心たる東京に位置する羽田空港は、その国際化を含む効率的な活用の成否が、経済集積の形成や地方経済の活性化など日本経済全体に関わると言える。したがって、「羽田空港の国際化」の必要性は、単に羽田空港に国際便を何本飛ばすかという範囲の話ではなく、今後の日本経済の発展戦略の観点から、日本の航空インフラ全体を視野に入れて考えねばなるまい。今後の少子高齢化・人口減少社会は、労働力人口と投資の減少を通じて経済成長にマイナスの影響を与えてしまう。

 こうした少子高齢化・人口減少社会を迎え、我が国経済は長期的には低成長にとどまる一方で、東アジア経済は今後も力強い成長を続けていく見通しである。実は中国、NIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)、ASEAN4(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン)といった東アジアの国々も少子高齢化に直面しているのだが、中国などでは農村に1億人はいると言われる過剰労働人口を都市部へ移動させ有効活用することが可能であるし、まだまだインフラ整備の途上にあることから、日本に比べて投資の限界効率が高く、その成長余地はなお大きい。

 少子高齢化・人口減少に対処するため、少子化対策、技術革新、女性や高齢者の就労促進、社会保障改革など、政府が取り組まねばならない課題は多い。しかし、これら課題に全力で取り組んだとしても、それだけで少子高齢化・人口減少による低成長の圧力を完全に克服できるとは思えない。したがって、もしも日本が今後も引き続き経済的繁栄を享受したいと望むのであれば、高成長によるマーケットの拡大と資本の蓄積を進める東アジアや新興経済国と日本との経済一体化を図る道は避けられないだろう。 羽田空港を「アジアへの窓口」とし、都心への近接アクセスという優位性を十分活かすことは、こうした日本の成長戦略から見ても必要だと筆者は考える。(おわり)
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