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2009-10-11 07:55

経済学は、GDP至上主義から脱皮せよ

四条秀雄  不動産業
 経済学は、もともとは幸福を追求する学問であり、効用学説で幸福を効用という形で数量化し、それをGDPで代用しています。私たちが成長を求めるのは、幸福になるためであり、GDPが大きければ大きいほど多くの人々が幸福に近づくことになっています。しかし、近年、ある程度の一人当たりGDPを超えてしまうと、幸福感との相関性が無い、場合によっては低下してしまう、というようなことが言われるようになりました。経済学者のスティグリッツ氏やフランス大統領のサルコジ氏なども同様の主張をしています。

 幸福とは、一般的には「満ち足りた状態」をさす言葉です。日本語の大和ことばにおいては、「めぐみ・恵み・愛ぐみ」が、それに近い状態を指しているように思われます。「満ちる」は物理的な場面での用法が多いようですし、「しあわせ」は、語源的にはラッキーや幸運や(枷をまぬがれた)自由に近いようです。一方、「恵み」は、神や自然や大人から与えられる状態やモノや事であり、従って「恵まれた」状態が、個人にとっての幸福な状態を表しているように思われます。大和ことばの世界では、幸福とは超越した者や保護する者から授かる性質のものであるようです。海外の報告では、宗教心の篤い人ほど幸福感が大きいというような指摘もあります。 

 私は自分が「いつ幸福であったか?」というような内省をして見ると、それは単に何か欲しかったモノを手に入れて喜びや快感を覚えたということではなく、(写真などを見て)そういう場面の過去の自分を思い出した、或いは、そういう人を見て共感した、ということで幸福感を覚えることのほうが多いように思われます。特に子供がそういう契機を与えてくれることが多い。子供の人生は、一つのことを思い起こさせる一枚の写真ではなく、自分の人生を次々に思い起こさせてくれる存在だからでしょう。つまり、幸福感というのは、何かを媒介にした反復する快想起・良いことの思い出しというのが本質なのではないでしょうか?

 とすると、幸福を追求する学問である経済学も、GDPの増大によってより多く何かを得ることを目指すよりも、「そうした快想起の反復を達成するにはどうしたら良いか」を考える方向に転換したほうが良いのではないでしょうか?「逝きし世の面影」という本がありますが、ここにはかつて幸福だった時代の日本人が描かれています。日本は「こどもの楽園」であったそうです。農業が主体で、天候以外には比較的環境が安定していた時代でしたから、大人の生活にも精神的な余裕があり、こどもの保護者として十分にこどもに「恵み」を与えられた時代だったのでしょう。恵まれて育ったこどもが、幸福感を覚えながら次の世代のこどもを保護できる大人になれる時代であったのでしょう。こどものこども時代を保護することは、良い経済社会を築く基礎であるように思われてなりません。
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