国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-09-30 16:33

天津濱海新区を2年半ぶりに再訪して

村瀬 哲司  龍谷大学教授
 去る9月中旬、天津濱海新区を2年半ぶりに訪問した。目的は、人民元国際化の動きが本格化するなかで、濱海新区における金融動向を直接確かめることにあった。2006年中国政府は、濱海新区を上海の浦東新区とともに国家開発プロジェクトに指定した。重点事業の一つが金融改革の実験で、「金融機関、金融業務、金融市場および金融開放に関する重要な改革は、原則的に濱海新区で先行実験する」として、「外貨管理政策、オフショア金融業務」などの改革可能性が示された。当時、天津市金融当局は、新区内では必要なだけの人民元・外貨交換を認めるなど7項目の外貨政策を発表した。

 事実、先行実験の一つとして07年8月国家外貨管理局は「個人の対香港証券投資を濱海新区の銀行を通じ解禁する」と発表したが、香港株式市場の過熱を招いたため、結果として実施は見送られた。08年中国政府は、多岐にわたる濱海新区関連政策を承認し、金融分野では株式のOTC(店頭取引)市場開設が具体化することになったが、人民元のオフショア市場具体化など外国為替管理に関連する分野には言及されなかった。

 今回の訪問に際しては、天津社会科学院や経済技術開発区投資促進局から、濱海新区の目覚ましい発展につき説明を受けた。ただし、金融特区に関しては、北京と並ぶ中国北方経済の金融センターを目指すという現実的かつ抑制された将来展望に終始し、これから人民元国際化の動きの中で一役を担うといった意気込みは感じられなかった。この背景としては、上海の国際金融センター化の動きには対抗しえないことに加え、人民銀行前総裁の戴相龍天津市長(2002年末-07年末)が社会保障基金理事長に転出したことが大きい。

 天津濱海新区における対外的な金融改革の実験は、事実上放棄されたと考えざるを得ない。他方、内外の先端産業の集積地としての実績と将来性に関しては刮目すべきものがあり、日本のトヨタや韓国のサムソン、米国モトローラなどの世界企業の生産活動に加え、当地で組み立てられたエアバス社のA320型機が、本年5月試験飛行に成功したことが象徴的である。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会