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2009-08-31 07:50

政界、「不安・混迷」の時代に突入

杉浦正章  政治評論家
 自民党長期政権へのうっ積が爆発して、一種の“無血革命”的な選択がなされた。この与野党の大差を背景に、民主党は政権を4年間は維持しようとするとみなければなるまい。たとえこの選択が、与党に対する不信に根ざした「消極的投票行動」であっても、選択は選択である。国民はその責任からは逃れられない。一方、民主党も、有権者が政権担当能力を確信しての選択ではないことをわきまえ、まずは公約実現に全力を挙げるべきだ。しかし、公約が実現不能であっても、新首相に能力が欠けても、国民は我慢を強いられる。長期政権という“熱い風呂”から飛び出すわけにもいかない。まさに有権者はガバナビリティ(被統治能力)を試されるのである。日本の政治は肥大しすぎた連立政権の内部的亀裂を内包しつつ、混迷の時代に突入する。また、小選挙区比例代表制の真の狙いである選挙による政権交代の時代に入ったとも言える。

 「政権交代」が問われた選挙で戦後始めて誕生した新政権を、マスコミは総じてもろ手を挙げて歓迎する論調だ。しかし筆者はあえて問題点を指摘したい。新首相になる鳩山由紀夫は、これまで「政権交代」を一つ覚えのように繰り返して成功したがが、就任してからはワンフレーズ・ポリティクスのコピーはもう効かない。全て結果責任での対応を迫られる。まず308議席という戦後最大の政党を統率できるかどうかである。かつて社会党の委員長・成田知巳は“文書課長”とやゆされたものだが。鳩山は「小沢一郎院政政権の文書課長」的である。塩川正十郎が「鳩山君では国会が持つまい」と述べているが、自らの発言に整合性を重視する鳩山の性格は、政治家的ではなく、整合性を求めすぎるが故に自身を迷路に追い込むタイプだ。小沢が「鳩山の耳に入れるべきでないことが多い。気にしすぎる」と述べているのは、その性格を看破しているからだ。臨時国会では首相として虚偽献金問題に説明責任を問われるが、これを果たせるかどうかがまず試金石となる。

 その鳩山民主党が公約した政策について、破たんの可能性が当初から指摘されているが、“親民主党的立場”をとってきた朝日新聞が「高速道路の無料化は合点がいかぬ」(23日付)、「増税論議を速やかに」(27日付)と早くも方向転換への“助け船”のような社説を出し始めた。今日31日付の社説でも高速道路の無料化など柔軟に見直すべきだとした上で、「政策を変えるならその理由を国民にきちんと説明することが絶対条件」と、より鮮明にさせた。不偏不党を標ぼうしながらの巧みな政権支援の“誘い水”である。目玉のマニフェストを方向転換しても朝日は批判しないという布石のようでもある。高速道路の無料化は、結局国民1人あたり24万円の負担となる。4人家族なら、高速道路を利用しようとしまいと、100万円の負担増だ。子供手当も3人子供がいる家庭は年間93万円の“増収”となり、家が新築できる。扶養者控除の廃止など、子供のいない家庭の増税によらざるを得ない公約である。財源を節約によって賄うことも、1-2年は可能でも恒常的には無理だ。要するに公約に無理がありすぎるのだ。実現が不可能となっても、国民は我慢するしかあるまい。公約など目に入らないまま、いやあえて目に入れないで選択をしたからである。ここでも皮肉にもガバナビリティが問われる。

 またあえて外交・安保を「無公約」にしたツケも回ってくる。朝日は、鳩山が米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)に寄稿した論文をめぐり、米国内に波紋が広がっていると報じている。元米政府関係者は「G7の首脳も誰一人として、彼の極端な論理に同意しないだろう。首相になったら、評論家のような考え方は変えるべきだ」と手厳しく反発しているという。「対等な日米関係」が鳩山の口癖だが、核の傘に頼らざるを得ない日米安保体制において「対等な関係」などあり得ない。「非核3原則の法制化発言」を見ても分かるように、要するに外交・安保が分かっていないのだ。日米関係が危険水域に入れば、喜ぶのは中国と北朝鮮だ。

 加えて重要な波乱要素は、選挙結果を見ても分かるように、小沢の選挙戦術が奏功して、政治的に「小沢へのカリスマ」が完成したことである。カリスマ政治の危険性は、小沢の一挙手一投足で物事が決まりかねないということである。極端に言えば、まばたきしただけで党内が動くかもしれない。有権者は鳩山を首相候補に選ぶと同時に「小沢院政」をも選んでしまった現実を認識しなければなるまい。このように「不安」を内包させて民主党政権はスタートを切るが、冒頭述べたように、まず4年間は政権を手放さないだろう。マスコミも当分3、4か月はハネムーン状態となる。しかし、縷々(るる)述べたような、いわば民主党の弱点がやがては顕在化し、党内に右派から左派までを抱えた“寄り合い所帯”が内部から崩壊してゆく可能性は否定できまい。大スキャンダルや大失政の可能性も内包した政権である。政権を手放さなくても、手放さざるを得なくなる可能性は否定できない。とりあえずは、この人気が来年の参院選挙まで持つかどうかがポイントだろう。
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