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2009-08-18 13:23

(連載)英語一本の国際化は大丈夫か?(1)

松本 和朗  大阪学院大学外国語学部教授、元ハンガリー大使
 日本の「国際化」が進む中で愁うべき現象は、第二外国語学習の凋落である。わが外国語学部も長く英語学科、ドイツ語学科の二本立てを維持してきたが、昨年度よりドイツ語学科学生の新規募集を停止せざるをえなくなった。現在の履修生が卒業すれば、ドイツ語学科はなくなることになる。これはドイツ語学科を応募する学生が年々減ってきており、大学としてこうした学生数の減少に対応せざるを得かったからであり、ドイツ語の需要減それ自体が大きなテーマであるが、ここではそれには直接触れない。むしろ、日本の外国語教育で英語が圧倒的な地位を占め、英語以外の第二外国語学習が危機的状態にあることの問題点を指摘したい。 

 なぜ英語以外の第二外国語がそうなっているかといえば、大学受験を目指す高校生は、当然入試対象科目に集中し、そこから外れてしまう第二外国語の勉強は、例え少しは興味をもっても、結局断念してしまうことが多いからである。このような状況では、日本での第二外国語学習はますます隅っこに追いやられてしまう。

 世に言う「国際化」が英語一本で済むと言うことであれば、その選択も正しいのかも知れない。しかし、世界の多くの国々では、複数外国語を学ぶことが必須となっており、それがグローバル化時代の特徴をなしている。そうした趨勢の中で、日本だけが英語一辺倒という形で孤立状態にある。グローバル化時代において英語の重要性はどれほど強調されてもよい。しかし、「国際化」=英語と考えることは間違っている。

 世界の多くの国々では大きく複数言語主義に向かっている。隣の韓国では、高校時代から第二外国語を学習し、さらに、英語以外の第二外国語も大学入試科目となっており、第二外国語学習に妥当な配慮がなされているという。日本では東大ほか一校が、特定問題について英語以外の第二外国語の選択を認めているにすぎない。いわゆる「東大方式」といわれている。この際、第二外国語学習を飛躍的に発展させる抜本的改革を行うとすれば、日本の高校でも第二外国語を必須とし、大学入試に第二外国語を加えることを真剣に検討すべき時期に来ているのではないか。(つづく)
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