国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-08-05 11:10

国際社会で評価された松浦ユネスコ事務局長

中山 太郎  研究所客員研究員
 政権交代の可能性は、益々高まっている。よく言われるように、外交・防衛問題については超党派でお願いしたい。そうでなければ、わが国の国際的地位は益々危うい。言うは易く、実際は限りなく難しい。こう考えをめぐらす中、昨夕、ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏の講演を聞く機会があり、多くの示唆を得た。

 1999年にアジアから初のユネスコ事務局長に就任。この選挙の際、中学の同級生だった小渕元総理が、選挙の大変さをとき、大車輪で応援した話は、ほほえましい。ただ、小渕総理は知り合いだからといって、推薦したわけでなく、松浦氏この人なら、世界の信頼を勝ち得ると見ての応援だった。初めての日本人事務局長を迎え、事務局も所在地のフランスも冷ややかだったが、松浦氏は、ただ一人で乗り込んだ。同じアジアから選出された国連事務総長が、ぞろぞろ自国人を連れて乗り込み、国連での評判が芳しくないのは、悲しいことだ。

 運営方法や組織の不透明さなどの改良に手をつけ、最初は反発を受けたりもしたが、徐々に事務局スタッフ、フランス社会の信頼を取りつけて行った。こうした中、今まで脱退して、そっぽを向いていた米国も復帰加盟し、ユネスコはようやく真のグローバルな機関となった。時に原理主義的主張をする米国と伝統的な立場のフランスの間の軋轢など、多くの難しい問題を抱えて奮闘した。米国を入れない「解決」は解決にならず、問題を先送りするだけだが、口先ばかりの西欧諸国は、時として、自国の得にならなければ、この地球社会に必要不可欠なプロジェクトであっても、冷淡だ。

 松浦氏のような、誠実に実績を一つ一つ積み重ねていく仕事ぶりは、国際社会でも、やはり真の友人や信頼を勝ち得る最良の方法である。こうした地味な、しかし正統的な仕事ぶりの重要さを日本社会、特にメディアは改めて、取り上げていくべきだ。松浦氏は、この秋、10年間の苦闘に別れを告げる。新政権は、大衆受けするスタンドプレーのみを目指すのではなく、是非この松浦氏の精神を継承していただきたい。無理かもしれないが、と思いつつ記す。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会