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2009-07-02 07:45

鳩山はトラバサミから逃れられない

杉浦正章  政治評論家
 「政権は末期症状」と民主党代表・鳩山由紀夫が批判しているが、自分自身も末期症状ではないか。鳩山は、選挙での有利さを考慮に入れて「麻生首相の手で解散をすべきだ」とも主張するが、逆に自民党にとっては、鳩山が総選挙までひたすら代表であり続けてほしいという事態になった。個人献金偽装記載問題は、自民党にとって願ってもない天佑なのだ。鳩山は、前代表・小沢一郎の西松献金偽装を上回るトラバサミにかかった。絶対に抜けないだろう。今後、自民党が指摘しているように、脱税疑惑に発展するなど新事実が生じて来る可能性があり、鳩山ブームは就任1か月あまりで確かについえた。

 鳩山は自らの釈明記者会見で、二つの致命的な論理上の破たんを見せている。一つは、全てを秘書のせいにして、秘書を解雇して済ませようとしたことだ。これは幹事長時代の2007年9月7日の記者会見で、自民党議員の政治資金疑惑に関連して、「資金管理団体、政党支部の代表者は、政治家本人。領収書の多重使用などは事務的なミスではない」と述べていることと、全く矛盾する。政治資金疑惑は全て政治家本人の責任であるというのが、鳩山本人の政治信条であり、それで政府・与党を追及してきたのだ。

 他の一つは、「秘書は個人献金があまりにも少なく、それが私にわかったら大変だという思いがあった」とも説明したが、鳩山の個人献金は、与野党の政治家のそれと比較しても、圧倒的に抜きん出ている。朝日新聞によると、年間5千万~1億1千万の個人献金が集まっているのだ。しかも、そのうち偽装で問題になった匿名献金が突出しており、5年間で2億3千万円に達しているのだ。5万円以下は記載しなくてよいから、それを“活用”したことになるかもしれない。発表の総額の2177万円どころではない。匿名献金は5年間で2億3千万に上るのだ。とても「個人献金があまりに少なく」などと言えることではない。つまり、死んだ「故人献金」や「他人献金」での報告に加えて、わざと5万円以下に小分けの献金にしたかたちで、報告を免れる構図が浮き上がっているのだ。

焦点は、この個人献金の原資はどこかということだ。隠ぺいしなくてはならない理由がある原資だから、隠ぺい工作をしたのであり、鳩山は謝罪会見でも全く説明責任を果たしていない。自民党選対委副委員長の菅義偉は「資産移転と疑われてもしょうがない。贈与税をなくすためにやったとか、いろんな疑惑がある」と述べている。莫大な遺産の処理で、資産を政治資金に移転して脱税をしていたとなれば、新事態である。民主党は、鳩山が小沢を擁護し続けたのと全く同じ構図で、幹事長・岡田克也が鳩山を擁護するというありさまだ。政党組織として説明責任を全く果たしていない。

 鳩山の好きな「国民」という用語をあえて使えば、総選挙で国民は総理候補を選ぶことになるが、「献金偽装首相」を選ばなければならないことになるのだろうか。自民党は麻生が解散に踏み切る以上、無駄な「麻生降ろし」などしているときでもあるまい。問題は、麻生が“解散逃げ込み”を踏みとどまって、「鳩山疑惑」が支持率として定着できるまで待てるかどうかだ。下手をすれば時間切れとなる。参考人招致を早々に実現させられるかどうかが最大の勝負所だ。官憲が動くとすれば、国会の追及状況を見たうえであろう。ロッキード事件と似ている。
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