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2009-06-29 07:44

目にあまる政局報道のぶれ

杉浦正章  政治評論家
 解散時期にせよ、党役員人事の問題にせよ、全国紙の「政局判断」が揺れに揺れている。「都議選前」の解散が「都議選後」となり、役員人事も朝日新聞などは名前まであげて散々人事報道したあげく、「見送られる」である。朝日の解散、党役員人事報道は、誤報に近い誤判断とも言える。勝手に誤判断しておきながら、各紙とも「首相、またぶれる」と、首相のせいにして“逃げ”を打っている。報道の姿勢が問われる場面が続いている。解散の性急な判断も、党役員人事の先走りも、首相・麻生太郎の6月25日の記者会見後に起きている。解散で、麻生は「解散はそう遠くない日」と述べたが、これをまずNHKが「都議選前の解散を視野」と踏み切った。これに引っ張られるように、朝日新聞と共同通信が「都議選前解散」を見出しにとった。読売だけは「都議選後」とした。

 加えて、なぜか党役員人事で走り始めた。首相会見後に首相側近筋が「党役員人事と閣僚の補充を行うことになろう」などと漏らしたのが背景だ。これを「首相の意向」と受け取った各社は、「首相人事に着手」と判断して書きまくった。朝日の場合、古賀誠選挙対策委員長は留任、細田博之幹事長、保利耕輔政調会長、笹川尭総務会長ら党3役は交代、検討中の幹事長は菅義偉選対副委員長や舛添厚生労働相らと報じてしまっている。まるで週刊誌並みの聞きかじり報道である。ところが、細田が27日に首相と会談すると局面はがらりと変わり、読売などは「人事は見送り」と書き、各社とも解散も「都議選後」と報じるようになった。麻生が「党役員人事をやるとか、自分から言ったことはない。外野が言っているだけだ」と述べたからだ。ところが朝日新聞だけは28日の朝刊でも「細田博之幹事長の交代焦点」と見出しにとったうえに、幹事長に枡添、菅の名前を挙げ続けた。

 朝日の見出しの流れを見ると、26日朝刊で「首相、都議選前の解散に含み」と踏み込んで、ようやく29日の朝刊で「解散、都議選後広がる」、「与党内、人事見送り論も」と訂正し、記事の中で「自民党役員人事は見送られ、衆院解散は7月12日投開票の東京都議選後になるという見方が広がっている」と報じている。昨秋の解散日断定の大誤報に次ぐ政局の見誤りである。政局記事の基本は、政治家の発言をとらえて、解散なり党役員人事なりの方向性を記者自身が打ち出す「判断力」にある。とくに見出しでどう判断を打ち出すかが勝負である。ところがその判断を打ち出しておきながら、「党内に見方が広がる」などと他人事のように訂正するのは“逃げ”とも言え、無責任でもある。加えて各紙とも自分の誤判断を麻生のせいにする傾向が流行している。

 人事見送りの原稿にはかならず「首相の求心力の低下」を理由に挙げ、また解散の訂正記事には「首相のぶれ」をその理由に挙げる。本人に直接取材しないままである。その解散にしても、今度は国対委員長・大島理森が「7月8~10日のラクイラ・サミットに行く前に解散するか。帰ってから解散するか。首相の決断はその二者択一ではないか」と述べており、まだ「都議選前」の可能性も残っているのである。したがって解散判断が二転三転して最初の線に戻ることも考えられる。ここまで来ると、いずれにしても総選挙の投票日は8月上旬になるだろう。同月2日か9日の可能性だ。解散が都議選の前か後かはそれほどの問題とはなるまい。25日から始まった新聞の迷走ぶりは、政治記者の質の低下すら覚えさすものがある。迷惑なのは読者ばかりであろう。一犬虚に吠ゆれば、万犬これに倣うというが、みんなで渡れば怖くない型報道の典型であった。 
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