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2009-04-15 00:00
安保理議長声明は、日中痛み分けの構図
杉浦正章
政治評論家
北朝鮮のミサイル発射での国連安保理における駆け引きを見ると、北東アジアにおける外交イニシアチブをめぐって、日中正面対峙の構図が浮かび上がっている。ぎりぎりのせめぎ合いの中で双方“痛み分け”の形で終わった形だ。とても官房長官・河村建夫が述べるように「大きな成果」ではないが、自民党の参院幹事長・谷川秀善が安易に批判したような“弱腰外交”とは言いきれない側面がある。日中対峙の構図は2つの側面から明白に表れた。一つは安保理決議をめぐるやりとり。他の一つは議長声明のワーディングをめぐる駆け引きだ。日本は法的拘束力のある安保理決議を主張、中国はもっとも弱い報道機関向け声明で対立した。
中国は落としどころを議長声明と考えていたふしがあるが、日本は米国の支持を背景に安保理決議一辺倒の姿勢であった。しかし、早期決着を狙う米国は、方向を転換、5常任理事国を「議長声明」の線でまとめて、日本に譲歩を迫ったのだ。首相・麻生太郎が変わり身早く議長声明を認めたため、こじれずに済んだが、日本孤立が危ぶまれた場面だった。国連外交筋は、日本の立場を「悔しかっただろう」と形容している。国際社会は官房長官の言うように大成果とは見ていないのだ。議長声明のワーディングをめぐっても、ミサイル発射は既存の安保理決議に「違反する」旨の表現を入れたい日本と、これを阻止したい中国の対峙場面だった。中国は当初、安保理決議1718に「従っていない (not in conformity)」という極めて軟らかい表現を主張、米国もこれに同調した。しかし日本は「違反(violation)」を主張、膠着状態となった。そこで日本側が考え出したのが、日本語では「違反」と訳すが、英語では「violation」より弱い「in contravention of」の表現だった。
とても北の犯した“重犯罪”向けではなく、“軽犯罪”に適したような用語だ。中国外交官が辞書を引いたという苦肉の策である。外務省が外交の国内受けを狙ってよく使う手だ。こうした日中ぎりぎりのせめぎ合いは、端的に言えば北の核ミサイルの脅威を一番受ける日本と、北東アジア外交で覇権を目指す中国とのせめぎあいだ。大局で見れば、中国は北の政権が倒れれば中朝国境の豆満江(とまんこう)で米国勢力と直接対峙することになり、これは避けたい。また対日関係では北朝鮮を“代理闘争”に使うことによって、日本をけん制するもってこいの材料となる。だから北にミサイル技術を小出しに提供してでも、北を擁護するのである。
ただ現実に決議が奏功するかというと、そうでもあるまい。「in contravention of」と表現した決議1718はぜいたく品の禁輸や北朝鮮の核・ミサイル関連企業の海外資産凍結などの制裁措置を盛り込んでいるのだが、ざるのように漏れている。決議1718の制裁措置を実行している国は、国連加盟国の半数以下にとどまっており、その中に中国が含まれていない。北は痛痒を感じないのだ。北は14日外務省声明を出して、6カ国協議に「二度と、絶対に参加しない」とボイコットを宣言するとともに、「核抑止力をさらに強化せざるをえない」と核開発を再開する構えを示した。またまた例によってやくざの脅しのような瀬戸際外交の復活である。もう北の瀬戸際外交に国際社会は躍らされるべきではない。当分冷却期間をおいて、いちいち反応しないことだ。バケツを持たせて廊下に立たせておくことだ。
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