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2009-04-13 00:00
(連載)「金正日・張成沢体制」が見えてきた(1)
大江 志伸
江戸川大学教授・読売新聞論説委員会特約嘱託
「ミサイル発射ショー」に世界の耳目が集まる中、北朝鮮の最高人民会議第12期第1回会議が4月9日、開催された。「宇宙の平和利用」を声高に叫ぶ一方で、平壌の官営メディアは、「衛星打ち上げ成功により、軍事優先の尊厳と威力を誇示した」という最高人民会議の楊ヒョンソプ常任副委員長の発言を報じた。「衛星打ち上げ」失敗を糊塗したうえ、軍事目的だったことを認めたに等しい物言いだ。「語るに落ちた」とはこのことだろうが、そうした自己撞着など意に介さないからこそ、北朝鮮の恫喝外交なのである。技術面はともかく、恫喝外交、国威発揚、ミサイル・ビジネスといった面で、北朝鮮は今回の「発射」を成功と位置づけている可能性が大だ。
ミサイル発射という「祝砲」の直後に開かれた最高人民会議は、金正日総書記の健康不安説に伴う後継関連人事が最大の焦点だった。会議では、国家最高ポストである国防委員長への金正日3選という「慶事」とともに、総書記の義弟・張成沢氏の国防委員就任が発表された。以前から関心の的となってきた総書記の息子3人への権力継承に関わる動きはなかった。当然のことだろう。張成沢氏の国防委員抜擢による「金正日・張成沢体制」の基礎固めこそ、今回の最高人民会議の最大の眼目だったからである。
金正日総書記を委員長に戴く国防委員会は、憲法で事実上の最高権力統帥機関とされる。昨年まで趙明禄第一副委員長の下に副委員長2人、委員4人体制だったが、後述するように、今年2月、呉克烈労働党作戦部長(大将)の副委員長就任で副委員長ポストは3人になった。国防委員も最高人民会議で、8人への増員が公表された。今回人事では、趙明禄第一副委員長、金永春(人民武力相)ら副委員長3人は留任し、国防委員8人のうち5人が新たに選ばれた。国防委員8人の大半は、軍人か、軍出身者か、軍事・公安行政の担当者かである。
その中にあって、金正日総書記の懐刀として党務畑を歩んできた張成沢氏の国防委員会入りは、異彩を放つ。北朝鮮指導部内で、党・国家組織と軍事組織の双方にまたがる権力を行使できたのは、事実上、金正日総書記ただ1人だけだった。張成沢氏の国防委員就任は、金正日総書記の突出した存在とは比較にならないまでも、「ナンバー2」が誕生したことを意味する。北朝鮮指導部内で、近年にない権力構造の変動が起きたのである。今回の国防委員会改編の狙いと背景はどこにあるのだろうか。少ない手がかりをたぐりながら、探ってみよう。(つづく)
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