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2009-04-06 00:00
政府は「座してミサイルを待つ」べきでない
杉浦正章
政治評論家
北朝鮮によるミサイル実験は、他国のミサイル攻撃に対して「座して死を待つことはできない」とする鳩山一郎内閣の敵地攻撃可能の政府見解を、ほこりをかぶったままにしておけない現実を突きつけた。核小型化とミサイル技術の結合は、取るに足らぬ小国が“軍事大国”化し、瀬戸際外交をもてあそぶ力を身につけ得ることを証明している。政府・与党は、核ミサイルのどう喝に全くひ弱なわが国の安全保障体制の現実を国民に明示し、「最悪独裁国家」(ブッシュ前大統領)に対する安全保障体制確立のための論議を国会で堂々と巻き起こすべきである。北朝鮮に核計画を放棄させることを最優先する6か国協議は重要だが、北が同協議を無視する以上、独自の抑止力の保持は不可欠となる。
あいも変わらず、マスコミや野党は、自衛隊の3月4日の誤報を鬼の首でも取ったように騒ぎ立てるが、問題の本質を理解していない。本質は、北の危険きわまりないミサイル実験にあるのであって、自衛隊の対応の“上手下手”にあるのではない。誤報は徹底的に避けるべきだが、レーダーに何かが映ったのは確かであり、それを見逃すことの方が重大だ。情報を開示する姿勢は大切であり、これをちゅうちょさせる論調は避けるべきだ。戦後実戦の経験のない自衛隊が“早とちり”をするのは、平和が続いた僥倖のせいとみなければならない。実戦では敵のおとり操作などもあり、頻繁に起きうることだ。今回の実験は、我が国の安保防衛上大きな問題を投げかけている。折から北は核爆弾の小型化に成功した、という情報があり、中距離ミサイル・ノドンの配備も少なくとも100基から300基の範囲で完了しているといわれる。
「最悪独裁国家」がこれを使って日本をどう喝し、今後軍事力による瀬戸際外交を強めこそすれ弱めることはないだろう。明らかに地域の軍事大国化を目指しているのである。アメリカの譲歩を引き出すにはこれしかない、と思い込んでいるのである。どう対応すべきかは誰の目にも明白であろう。抑止力をつけ、核もミサイルも日本に対しては有効な手段になり得ないことを北に知らしめることである。外交力に加えて抑止力、これを車の両輪としないままでは、真の安全保障は成り立たない。それにはまず、日米同盟で北の核攻撃には核攻撃で対処することを鮮明にすることだ。加えて日本独自の安全保障体制も確立する必要がある。まず北のミサイルに対する迎撃態勢をより完璧なものへと進化させることだ。しかし核ミサイル攻撃が一発でも成功すれば、日本は壊滅する。どうしても必要となるのが、ミサイル発射準備に着手した敵基地破壊の先制攻撃である。
かって1956年に鳩山内閣は「座して自滅を待つべしというのが、憲法の趣旨だとは考えられない。他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能だ」と「敵地攻撃」に関する政府統一見解を国会に提出している。その後安保条約改訂論議への配慮、マスコミの論調、野党対策、ソ連の崩壊などもあって、政府は事実上封印してきた。しかし事態は、冷戦時代に匹敵するか、もしくはそれ以上に危険な側面がある。相手は、ソ連と異なり、論理では説得できない相手だからだ。政府・与党は敵地攻撃論議の封印を解くべきである。早期警戒衛星の導入、巡航ミサイルやトマホークの艦船搭載、F22戦闘機導入などを図り“降りかかる火の粉”を防ぐ姿勢を北に見せなければならない。座してミサイルを待つべきではない。日米連携に欠かせない集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈改定も急ぐべきだ。
民主党代表・小沢一郎は、かって外国特派員協会での記者会見で「敵基地攻撃能力保持論はむちゃくちゃな暴論だ。極端に言えば、日本政府が敵と認定した国の基地はどこでも攻撃できるという話になる」とあらぬ方向に短絡して、批判しているが、副代表・前原誠司は異なる見解だ。前原は4月1日のCSテレビ番組で敵地攻撃問題に関連して「議論をして防衛の現実、実力を国民が知っておくことが必要」と強調した。民主党にも理解者は多い。この際、国会で論議を展開して、国の安保体制をより万全なものへと変質させるべきだ。抑止力を確保すれば、ソ連と同様北の独裁体制は早晩行き詰まる。
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