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2009-03-24 00:00
東アジア環境・エネルギー共同体への取り組みを強化せよ
武石 礼司
東京国際大学教授
現在、世界各国は経済危機への対応に追われており、エネルギー消費量の対前年比での減少が生じている国も多い。地球環境問題については、年々温暖化しているという短期の見方ではなく、百万年、億年単位での地球環境の変遷を辿りつつ、対応策を考察する著述が相次いで出されている。エネルギー・環境問題がいったん沈静化し、より長期の視点に立った対応の必要性が理解されつつあるのは望ましい動向である。
しかし、今後、不況が底打ちし、世界経済に回復の兆しが見えてきたときには、中国、インドを始めとして、不可避的に、再度、エネルギー需要が急増する国が出ると予測できる。確かに、米国のグリーン・ニューディールを始めとして、低炭素社会に向けた取り組み強化も始まりつつあるが、ハイブリッド車の導入が急速に進んでも、買い替えが全面的に達成されるには20年、30年という期間が必要となる。しかも、世界的なエネルギー需要の増大に応え、まとまった量の供給が期待できるエネルギー源は、当面、従来通りの石炭、石油、天然ガスという化石燃料とならざるを得ない。化石燃料消費の世界的な増大は今後20年、30年と続き、CO2排出量の増大という結果が生じる。
中国、インド等の発展の余地を持つ国の政府が、国民の所得向上を図り、国の発展を目指すのは当然であり、発展途上の諸国に「経済成長を抑制せよ」と先進国が言っても、受け入れられる可能性は殆どない。こうした状況下では、発展段階に応じた支出可能なコストに基づき、世界全体で見て、エネルギー消費量と温室効果ガスの排出量の増大分を少しでも減らす試みこそが重要となる。日本政府が「2050年で世界の二酸化炭素排出量を半減する」というトップダウンの決断を促し、世界各国にCO2排出の減少とエネルギー消費量の減少を求めても、途上国は受け入れない。つまり、国連の締約国会議(COP)で先進国のみが温室効果ガスの排出量の削減を宣言することよりも、むしろ、中国およびインドといった諸国に、環境規制を強めることが産業競争力の強化をもたらすことを示し、ボトム・アップでのエネルギー効率の向上、省エネルギーの実施、石炭から天然ガスへの転換、さらに再生可能エネルギーの利用拡大を図ることこそが、地球温暖化対策として最も効果的な施策となる状況が出現している。
東アジア地域には、アセアン・プラス3、アセアン・プラス6という中国、インドを含んだ環境とエネルギー問題に取り組むことができる枠組みが存在しており、この場をさらに発展させて、化石エネルギーの各国間での奪い合いを予め避け、エネルギーの相互融通を図り、さらに、エネルギー効率の向上、省エネ推進を図るべきである。各国がともに経済発展しつつ、その中でのエネルギー消費増大の抑制、CO2排出量の増大抑制に取り組むことこそが、結局は最大の効果を生むことが理解される必要がある。
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