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2009-03-20 00:00
(連載)ロシア経済の最近の動向をさぐる(2)
河東 哲夫
Japan-World Trends代表
これに加えて、「対外債務」とは言いながら、実はそれは他ならぬロシア人自身が海外に逃避させた資金(脱税などのために)が、またロシアに再投資されている分がかなり多い、ということを勘案するべきだ。「海外のロシア資金」は常に国境を出入りしているため、正確な推測は不可能なのだが、ガヴリレンコフ氏は大体3,500億ドルと推測する。つまり、ロシア企業が「西側の銀行や証券会社」に対して抱えている負債のかなりの部分は、実は別のロシア人、あるいは本人に対するものであるかもしれないのだ。
2月27日付『モスコフスキー・コムソモーレツ』紙は、クリチェフスキーという経済学者の言として「2008年1~9月、ロシアの企業は海外のタックス・ヘブンから815億ドル、つまりロシアの対外借入れの54.6%を得ている。これが全てロシア人自身の資金だとすると、ロシアの民間借入れの半分は、在外のロシア資金から行っていることになる」と報じている。ロシアのメディアが「政府は大金持ちが自分で自分に返済するための資金をくれてやっている」と批判する所以である。ロシア人がロシア人に返すのならば、少しは延滞してもいいだろう、ということになる(?)。
だからかもしれないが、ロシア人は対外債務の組換え(リストラ。要するにこれまでやっていた借換えを、手数料をやや上げて別の形、つまり延滞で行うことだ)に着手している。例えば、報道によれば3月にミラックス・グループがロンドンで、1億8千万ドルの債務支払い繰延べ合意に達した。2007年3月、3年間の期限で発行した債券の償還を繰り延べたのだ(但し、返済額を割増し)。
日本人なら、「借りたカネが返せない」ということになれば、電車に身を投げることにもなろうが、ロシア人はじっくり構える。「今払うカネがない。もしお望みなら、破産したことにして、担保の株券や地所を上げてもいいが、あんたはそれで本当にいいのかね? ウチの株券や地所をもらって、それをどうこうできるのかね?」という意味をこめて、西欧の銀行家の目をじっと見つめる。すると西欧の銀行家達は、ロシアの相手を破産させて完全な損失を蒙るよりはましとばかりに、債務支払いの延滞に応じつつあるのだ。だから、人身事故がこれから増えるのは、カネを返してもらえない西欧の方かもしれない。
2月初旬、日本経済新聞が第一面で「ロシアのリスケ」の可能性を報じたために、ユーロは暴落するわ、ロシア政府は記者会見をやってそのような可能性を否定するわ、の大騒ぎになった。これは誤報だったということにされてしまったが、確かにロシア政府が民間債務の全てを代表して一括リスケ交渉をするようなことにはなっていないものの、個々の銀行・企業はリストラ交渉をやっているのだ。で、この面からも今年の返済必要額は少し減るかもしれない。(つづく)
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