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2009-03-11 00:00
(連載)共同体の内なる敵(1)
辻 正寛
会社役員
さる2月10日、あるオランダ人政治家が英国への入国を英国政府によって拒否されるという事件があった。「共同体の調和と公共の安全を脅かす」というのがその理由である。この人物は、オランダ自由党の党首ヘルト・ウィルダース(Geert Wilders)で、札付きの反イスラム主義者として知られる。昨年には『フィトナ(Fitna)』というイスラムの教えを糾弾する内容の短編映画をウェブ上で公開し、国連やEUをふくめた国際社会から非難を浴びたことでも話題を呼んだ。今回の英国訪問の目的は、ある英国上院議員の招待によるもので、非公式の場での『フィトナ』の映写会に出席するためであった。ウィルダース氏は、ヒースロー空港で入管当局から足止めを喰らい、入国を果たせぬまま帰国を余儀なくされたという。
英国国務省は、今回の措置について、「公共の安全を脅かす者は入国を拒否することができる」とのEU法規にもとづいたものとしているが、具体的には、ウィルダースの入国ならびに『フィトナ』上映によって、英国内のイスラム勢力が暴動やテロなどを引き起こすことを恐れたためであったと考えられる。それに対して、オランダ外務省は、EU加盟国の国会議員がEU圏内を自由に移動できないことの問題性を指摘し、遺憾の意を表明した。さらに、英国をはじめ欧米メディアの反応としては、「表現の自由」などの市民的権利の故郷である英国が、自らその権利に制限を加えたことへの批判や、制限されるべきはイスラム過激派の活動ではないかとの指摘が目立った。
このように、今回の事件をめぐっては「公共の安全」「EU圏内の移動の自由」「表現の自由」の三つが主要な論点として掲げられたとみていい。いずれの論点も理に適っており、それだけに英国当局の判断の是非が一義的に定まらないという状況が発生した。結果責任を問われる立場にある当局としては、騒擾を未然に防ぐためにも、その触媒となりうる人物の入国を拒否することは当然であったとの判断も可能であるし、逆に、そのような対応は、事なかれ主義であり、イスラム過激派への宥和的態度だという咎めも成り立つ。ちなみにウィルダースはこの事件のあと、米国を訪問し、FOXニュースのテレビ・ショーに出演している。米国はこの人物の入国を許可したわけである。(つづく)
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